短期大学
日本における短期大学(たんきだいがく、英: Junior college)は、大学のうち、「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成する」ことを目的とする[1]、中等教育修了者に対して教育を施す[2]、修業年限(学位を修了するまでに最低限在学する年数)が3年以下の教育機関である。省略して短大(たんだい)と使用される。本項には、別称である短期大学部(たんきだいがくぶ)、省略して短大部(たんだいぶ)も解説されている。
短期大学本科 (regular course) は、ISCED-5Bレベルの高等教育機関とされ、修了者に短期大学士(アソシエイト)の学位が授与される[2]。また、各省庁の養成施設の認定を受け、免許等を取得する試験の全て、あるいは一部免除などの待遇が設けているところも少なくない。
短期大学専攻科 (advanced course) は、短期大学本科の修了生を対象とした、1年以上課程の高等教育機関(ISCED-5Bレベル)であり、履修修了者には履修証明が発行される[2]。
短期大学別科 (short-term course) は、サーティフィケート取得を目的とした1年以上の教育課程であり、高等教育ではなくISCED-4レベルの中等以降高等以前教育に位置づけられ、修了時に学位は発行されない[2]。
目次
1 概観
1.1 短期大学の概要
1.2 短期大学部
1.3 3年制短大(医療系)
1.4 短期大学別科
1.5 短期大学専攻科
2 歴史
2.1 第二次世界大戦前
2.2 第二次世界大戦降伏直後
2.3 学校教育法の施行後
2.4 2000年代後半以降
3 教育研究
4 設置基準
5 脚注
6 関連項目
概観
短期大学の概要
日本の大学は、「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させること」を目的とする教育機関であり、その修業年限は原則として4年[3]とされている[4]。その一方、それに替えて「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成する」ことを主な目的とし、修業年限を2年または3年とする大学を認めている[5]。これが短期大学である。したがって短期大学も大学の一種であり、法令文においては「学校教育法第百八条第三項の大学」を短期大学と称している。
戦後学校教育法の施行により、戦前からの旧制専門学校が新制大学に移行する際に、大学設置基準に満たない学校が出ることが問題とされたため、その解決のために新設されたのが短期大学の制度である。当初は暫定の制度とされ、1950年に「当分の間」という単語が含まれた制度が作られた。1990年代になって「当分の間」という単語がなくなり、恒久化された。
1950年に設置した短期大学は公立17校・私立132校で合計149校となっている。
また
これら各校は旧制専門学校から移行した学校[6]。に留まらず、旧制中等学校卒業者を対象としていた各種学校のうち短期大学の基準を満たし移行した学校、短期大学制度発足により新規に設置された学校など、発足に伴い各校の個性がある。
通常の大学では先に学部が置かれ、その下に学科が置かれるのに対し(以下「大学」とはこれをいう)、短期大学では直接学科が置かれる。
短期大学制度の発足当初から置かれている主要な学科は、教養、英文学、日本文学、保育学などに関する学科を中心とし、勤労者向けに夜間に教育を行う経済学、工学などに関する学科もあった。
看護学の学科を置く短期大学は1990年代に増加し、昼間で福祉学に関する教育を行う学科も増えていた。しかし、医療技術の高度化による教育の拡張傾向や看護師取得に必要な要件の変更から大学への改組が相次いでいる(後述参照)。
また国公私立の短期大学が併合や合併、大学に改組した例が過去に数多く存在する(新制大学参照)。なお現在、国立短期大学については全て廃止されている。
短期大学部
中等部・高等部と同様に短期大学の中には四年制大学に併設されているものもあり、この短期大学については「〇〇大学短期大学部(- だいがくたんきだいがくぶ)」と名乗ることがある。
ただしあくまでも法制上は「短期大学」であり、四年制大学とは独立した学校として扱われている[7]。したがって、四年制大学の一部門(学部など)として短期大学部が存在するとみなされるわけではない[8]。また学長についても、四年制大学の学長とは別個に置かれる(ただし四年制との兼任は可能)。
短期大学部は教育環境が良好で、学術研究が進んでいる場合がある。また学生の募集が停止された場合は、ほとんどが併設大学の学部への改組や、併設大学の新設学部となる場合が多い(ただし、家政系の学科などは継承されずに消滅するケースも目立つ)。
私立は1950年より、日本大学短期大学部、明治大学短期大学部、東京農業大学短期大学部、近畿大学短期大学部などが開校した。国立は1951年より、名古屋工業大学短期大学部、九州工業大学短期大学部などが設置され、公立も同年、静岡県立大学短期大学部、会津大学短期大学部などが開学した。
3年制短大(医療系)
修業年限が3年の短期大学は当初夜間に教育を行う学科があったが、その後、昼間部の看護系・衛生技術系(医療関係)の学科が設置され、昨今は保育系などもある。一方で従来は2年制だった昼間の保育・発達科学系の学科が3年制の教育課程になりつつある。
医療技術の高度化による教育の拡張により、京都大学医療技術短期大学部、東北大学医療技術短期大学部、筑波大学医療技術短期大学部など、国立大学付属の医療技術短期大学が全国にあったが、ほとんどは国立大学法人により設置されている大学の医学部保健学科に改組した。
私立では慶應義塾看護短期大学があったが、新設学部として改編し、2003年に慶應義塾大学看護医療学部となった。そのほか、国公私立の医療技術短期大学が併合や合併、大学に改組した場合が過去に数多く存在する(新制大学参照)。
現在ある医療技術系は、埼玉医科大学短期大学、東京歯科大学短期大学、神奈川歯科大学短期大学部などが挙げられる。
短期大学別科
別科は、履修証明取得を目的とした1年以上の教育課程である[2]。
短期大学専攻科
1992年に学位授与機構(現:独立行政法人大学評価・学位授与機構)による「認定専攻科」制度が開始され設置されるようになった。本科卒業後、短期大学専攻科を修了し機構の審査に合格すれば、大学編入学をすることなく学士の学位が取得できるようになった。
歴史
第二次世界大戦前
産業革命によって、「男性は外で働き、女性は家で家事をする」という性別的分業が明治時代に出来上がったといわれる。また、義務教育修了後の進学(高等小学校や、旧制中学校または高等女学校)が少なかったため、男女問わず高等教育の就学率は低かった。
第二次世界大戦降伏直後
旧制高等学校は、学校教育法の施行以前に、「ジュニア・カレッジ」として、短期大学に相当する学校としての存続を模索したが、連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ/SCAP) に認められず頓挫した。同様に、大学設置基準に満たない旧制専門学校も対象に、当初は一時的な処置として、短期大学という制度が制定された。
大学への編入学が1990年代まで制限されたため、旧制高校復活ともいえる専門教育準備のための一般教育系学科を置く短期大学の設置はなく、わずかに学芸学部の2年課程や専門課程を欠いた医学部進学課程(医進)の設置が見られた程度である。
学校教育法の施行後
学校教育法が施行されて、それまでの分岐型の教育システムから6・3・3制の単線型学校体系に統一された。また、昭和30年代には、国立の工業短期大学が長岡、宇部、久留米に設置されたが、1962年に高等専門学校制度が発足すると全て高等専門学校に転換された。
2000年代後半以降
2008年9月のリーマンショック以降、「100年に一度の大不況」といわれ、近年ではマスメディアにより少子高齢化が騒がれるようになった。その煽りをうけ、人気のない大学・短期大学は定員割れを起こす時代がきている。
その結果、短期大学の数は平成に入って以降、特に2000年代以降は激減している。中でも工学・看護学系の分野で顕著である。しかし、その大部分は4年制大学への改組であり、閉学となる場合はすでに同一学校法人が存在する場合がほとんどである。なお大学への改組にあたり校名もともに変更することが多いほか、女子短期大学からの改組の際においても同時に共学化する場合が多い。
教育研究
大学を今後どのように発展させるかが、文部科学省の中央教育審議会の大学部会で審議されている。
短期大学は総合的な教育研究を行っているため米国のコミュニティ・カレッジと同様に学位を与えるべきとする答申があり、2005年に施行された学校教育法改正により、従来の学術称号(準学士)から学位(短期大学士)への変更がされ、修了者に対する学位の授与や、4年制大学への編入学の拡大がされた。
中学校教諭・小学校教諭・幼稚園教諭二種免許状をはじめとする教員免許を取得できる課程を置いている短期大学は、大阪音楽大学短期大学部、大阪芸術大学短期大学部、鹿児島県立短期大学、関西外国語大学短期大学部、桐朋学園芸術短期大学、島根県立大学短期大学部、帝京大学短期大学、東海大学短期大学部、三重短期大学、龍谷大学短期大学部などが挙げられる。
女子短期大学で著名な短期大学は、青山学院女子短期大学、大妻女子大学短期大学部、岐阜市立女子短期大学、共立女子短期大学、上智大学短期大学部、女子美術大学短期大学部、戸板女子短期大学、南山大学短期大学部、武庫川女子大学短期大学部、立教女学院短期大学などが挙げられる。
編入学で著名な短期大学は、大月短期大学、京都経済短期大学、産業技術短期大学、新島学園短期大学、三重短期大学、山形県立米沢女子短期大学などが挙げられる。
設置基準
- 最低限必要とされる設備など
- 教室・事務室・学長室・専任職員・研究室・図書館・課外活動施設・体育館・グラウンド
- 教育環境
- 建物面積1,600m2以上
脚注
^ 学校教育法第108条第1項・同第2項
- ^ abcdeUNESCO (2008年). “Japan ISCED mapping”. 2015年10月31日閲覧。
^ ただし、特別の専門事項を教授研究する学部、および、夜間において授業を行う学部については4年を超える場合も認められ、医学を履修する課程、歯学を履修する課程、薬学を履修する課程のうち臨床に関係する実践的な能力を培うことを主な目的とするもの、または、獣医学を履修する課程についての修業年限は6年。
^ 学校教育法第83条第1項、同法第87条
^ 学校教育法第108条第1項・同第2項
^ 赵春娥 (2 2011). “关于日本短期大学的研究探讨”. 大家 (5). ISSN 1005-4553. http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTotal-DAJI201105048.htm. "1950年开始正式开设短期大学......总共149所短期大学。"
^ もともと「短期大学」を名乗っていたが、のちに「短期大学部」に改められた例も存在する(淑徳短期大学→淑徳大学短期大学部、聖徳学園短期大学→聖徳大学短期大学部など)。
^ 文部科学省 (2012年3月). “短期大学に関するよくある質問について”. 2015年11月25日閲覧。
関連項目
- 日本の教育
- 日本の短期大学一覧
- 短期大学士
- コミュニティ・カレッジ
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