モスク











モスク(英: mosque)は、イスラム教の礼拝堂のことである。


アラビア語ではマスジドمَسْجِد‎, masjid, 「ひざまずく場所」(サジダ سجدة‎ を行う場所)の意)といい、マスジドの訛った語で、イスラーム帝国がスペイン地方を占領したときマスジドがスペイン語でメスキータ (mezquita) となり、それが英語ではさらに訛ってモスク (mosque) となった。中国ではモスクを清真寺(せいしんじ、清真はイスラム教の中国での通称)と呼んでいる。


モスクは欧米、日本、韓国などにおける呼び名である。しばしばイスラーム寺院または回教寺院と訳されるが、モスクの中には崇拝の対象物はなく、あくまで礼拝を行うための場である。




目次






  • 1 概要


  • 2 モスクの内部と付属設備


  • 3 モスク建築


  • 4 ギャラリー


  • 5 脚注


  • 6 関連項目


  • 7 外部リンク





概要





エジプトのアスワンにあるモスク


モスクは都市の各街区、各村ごとに設けられるが、都市の中心には金曜礼拝を行うための大きなモスクが置かれ、金曜モスク(マスジド・ジャーミー مسجد جامعmasjid jāmi` 、略してジャーミー جامعjāmi` )と呼ばれる[1] 。このようなモスクは、専任職員としてイマーム(導師)、ムアッジン(アザーンを行う者)を抱えている。エジプト、カイロのアズハルのような特に大きなモスクは複合施設(コンプレックス)をともなっており、マスジド(ジャーミー)だけでなくマドラサ(イスラーム学院)も併設されたりしていることもある。病院や救貧所のような慈善施設をともなう場合もあり、これらのモスク複合施設の維持・運営はワクフ(寄進財産)によって担われる。


伝統的に、モスクは政府の布告を通達する役所、カーディーの法廷が開かれる裁判所、ムスリム(イスラーム教徒)の子弟に読み書きを教える初等学校(クッターブ)であった。また、小モスクは現在でも「無料人生相談所」とでも言うべき機能を持っており、近隣に住むイスラーム法の知識をもった人物が、人生相談に対してイスラーム法に基づいて助言・回答などを与える場所として活用されている。


また、モスクの中には歴史上ならび芸術的な観点での付加価値が高いものがあり、世界各国のモスクにはそれに値するものが点在している。それらの中には、嘗て存在していたが何らかの要因から倒壊してしまったもの[2][3] や 損壊が著しいもの、ある理由から存在自体が危ぶまれているもの[4]が含まれている為に、これらを如何なる形で確実に保存 或いは どう復元させるかが問題となっている面がある。


モスクのない地域ではムスリムの旅行者や留学生に配慮し、駅の構内や市役所などの公共施設やホテルに礼拝用の部屋を用意する例もある。またオリンピックなどの大規模なイベントではムスリムの旅行者が急増するため、トラックの荷台に礼拝所を乗せた『モスクカー』で対応することも検討されている[5]



モスクの内部と付属設備




礼拝堂内部(東京ジャーミー)


内部には、イスラーム教の教義に従い、神や天使や預言者・聖者の(偶)像は置かれることも描かれることもない。装飾はもっぱら幾何学模様のようなものだけである。マッカ(メッカ)の方角(この方角をキブラ( قبلة‎ qibla)という)に向けて、壁にミフラーブ( محرابmiḥrāb)と呼ばれる窪みがある。これは、コーランの規程に従ってメッカの方向に対して行わる礼拝の方向をモスクに集う人々に指し示すためのもので、礼拝の場であるモスクに必須の設備である。その向かって右隣にはイマームが集団礼拝の際に説教を行う階段状の説教壇がある。付属設備としては、礼拝の前に体を清めるための泉(ウドゥー、泉がない場合はシャワールームで代用)などが見られ、礼拝への呼びかけに用いるミナレット(マナーラ)を有する場合も多い。



モスク建築


建築構造は、回廊に囲まれた四角形の広い中庭と礼拝堂を持つ形が基本形である。アラブ圏ではダマスカスのウマイヤ・モスクのようにキリスト教の教会の構造を取り入れた多柱式のモスクが主流であったが、イランではイーワーン(半ドーム)を多用した形式が起こった。アナトリア半島では中庭をドームで覆う形式が起こり、オスマン帝国に至ってビザンツ帝国の教会建築を取り入れ、大ドームを小ドームや半ドームで支えることで柱のない広大な礼拝堂空間をもつ形式を生み出した。


図像を廃した内装と外観を持つモスクは、その装飾美・建築美から、非イスラーム教徒にとっても観光施設としての役割も果たしている。トルコ、イスタンブールのスルタンアフメト・モスク(トルコ語名スルタンアフメット・ジャーミー。通称ブルーモスク)や、イラン、イスファハーンのイマーム・モスク(ペルシア語名マスジデ・エマーム。旧名マスジデ・シャー、「王のモスク」)などの著名なモスクは世界遺産に登録されており、世界中から観光客を集めている。



ギャラリー




脚注


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  1. ^ ムスリムは金曜日にモスクに集まって皆で一緒に礼拝するため、金曜日はアラビア語で「集まる」を意味する動詞 جَمَعَjama`a に由来する جُمْعَةjum`aと呼ばれる。このため、特にその地区や地域で重要であったり大きなモスクを「ジャーミー」「ジャーミウ」 جامعjāmi` と呼ぶ。


  2. ^ トルクメニスタンのアナウに存在していたセイット・ジュマール・アッディン・モスク(SEYIT JAMAL-AD-DIN MOSQUE)がその一例


  3. ^ “Shrine complex of Jamal al-Din, Anau, Turkmenistan”. Square Kufic. 2016年8月27日閲覧。


  4. ^ マリの泥のモスクがその一例


  5. ^ 50人超が礼拝できる「モスクカー」開発 五輪でのもてなしに - NHK




関連項目












ウィキポータル 関連ポータルのリンク


  • ウィキポータル イスラーム

  • ウィキポータル 建築



  • イスラーム建築

  • 著名なモスクの一覧


  • 外部リンク



    • オールド・カイロ、アムルのモスク (日本語)

    • ダマスクス、ウマイヤのモスク (日本語)

    • イスファハーン、シャイフ・ロトフォッラー・モスク (日本語)

    • 中国北部のイスラーム建築」 北京のモスクなど

    • 書籍、神谷武夫著 「イスラーム建築」












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