サーキット








ドイツのニュルブルクリンク


サーキット (Circuit) とは、自転車競技やモータースポーツを行うための競技施設であり、周回走路と付随施設の総称である。




目次






  • 1 呼称


  • 2 主な設備


    • 2.1 走行路


    • 2.2 安全設備


    • 2.3 運営設備




  • 3 分類


    • 3.1 施設レベルによる分類


    • 3.2 設置方法による分類


      • 3.2.1 パーマネントサーキット


      • 3.2.2 仮設サーキット(市街地コース、公道コース)


      • 3.2.3 複合型、その他




    • 3.3 形状による分類


      • 3.3.1 ロードコース


      • 3.3.2 オーバルトラック


      • 3.3.3 複合型


      • 3.3.4 ドラッグレーストラック




    • 3.4 路面による分類


      • 3.4.1 オンロード


      • 3.4.2 オフロード




    • 3.5 大きさや設備による分類


      • 3.5.1 フルサーキット


      • 3.5.2 ハーフサーキット


      • 3.5.3 ミニサーキット




    • 3.6 使用目的による分類


      • 3.6.1 カートコース




    • 3.7 その他




  • 4 歴史


    • 4.1 日本




  • 5 サーキットの課題


    • 5.1 騒音


    • 5.2 交通


    • 5.3 経営




  • 6 脚注


  • 7 関連項目





呼称


Circuitの語源はラテン語のCircuituscircum (丸く) + īre (行く) + -tus過去分詞語尾=「丸く回った」)[1]。英語の発音では「サーキット」だが、フランス語では「シルキュイ」となる(語尾の子音字"t"は発音されない)。また、イタリア語では「チルクイト」(Circuito)、スペイン語では「シルクイート」(Circuito)。


ほかに言語圏により次のような呼び方もある(ただしこれらの中には、「サーキット」には含まれない、周回しない(スタートとゴールが離れているような)競技場も指すこともあるものもある)。




  • 米語 - スピードウェイ (Speedway)、レースウェイ (Raceway)、トラック (Track)

  • イタリア語・スペイン語・ポルトガル語 - アウトードロモ[2] (Autodromo)


  • ドイツ語 - リンク (Ring)


  • 中国語 - 賽車場


一部メディアや個人の表現などに「サーキット場」と表記されることがあるが、これは「周回“路”“場”」として類義語が重なったものとなる。


一般的には舗装路の施設に対してのみこの言葉を使うが[3]、未舗装路(ダート)で行う競技(ダートトラック、ダートトライアル、フラットトラック、モトクロス等)の施設に対しても「オフロードサーキット」の名称が使われることがある(オフロードサーキット白老など)。



主な設備



走行路





富士スピードウェイのスタート/フィニッシュライン



コントロールライン

周回の基準となる線。このラインを通過してから次に通過するまでのタイムをラップタイムと呼ぶ。周回の終わりのことをフィニッシュラインと呼ぶが、ほぼ同義。後述するスターティンググリッドは、4輪と2輪で位置が違う場合もある。

グリッド

静止した状態からスタートするレースのために、スタート位置を定義する枠(マーク)。それぞれの列は「ロウ」(row) と呼ばれ、特に先頭部分の枠は「フロントロー(フロントロウ)」と呼ばれる。スタンディングスタートで開始されるレースではフォーメーションラップを行うことが慣例とされているが、フォーメーションラップ開始前にはダミーグリッド、終了後をスターティンググリッドと呼ぶ。ローリングスタートで開始されるレースでは、単にスターティンググリッドと呼ぶ。

ストレート

ほとんどの場合、コントロールラインがある位置は長い直線路になっている。この直線路をメインストレートあるいはホームストレートという。また、メインストレート以外で最も長いストレートを指して、バックストレートと呼ぶこともあり、コースレイアウトによってはメインストレートよりも長い場合もある。それぞれ「メインストレッチ」、「バックストレッチ」といった呼び方もある(ストレッチ=「伸びた(直線)」)。ただし、中には鈴鹿サーキットの西ストレートやサルト・サーキットのユノディエールのように途中にわずかな曲線を持つものや、ホッケンハイムリンクのパラボリカのように全体的に緩やかにカーブしているものもある。この場合でも、直線路と同じようにスロットルを全開に出来るためストレートと呼ばれる。





鈴鹿サーキットのコーナー(逆バンク)



コーナー

「角」という意味で、いわゆるカーブのことである。ターン (turn) あるいはベンド (bend) とも呼ばれる。サーキットによりコーナー毎に名前がついていたり、あるいは単に番号で呼ばれたりする。大きさは30R、200Rなどと曲率 (R) でされ、Rが小さいほどタイトな低速コーナーとなる。いくつかの異なるRで構成されるコーナーを「複合コーナー」という。また、形状を「ヘアピン」「スプーン」「S字」などと表現することもある。

シケイン

スピードの抑制(減速)を促すことが目的の、間隔の狭い複数の曲率半径を持つ小さな複合コーナー。その多くはストレートあるいはコーナー途中にクランク状で設置される。常設と選択式とがあり、選択式は本来のコースから分岐して再度合流するよう設置されていて、主催者がレースに応じてどちらを通るか(シケインを利用するかしないか)を決定する。

バンク

スピードを落とさずに曲がることが出来るようにするため、コーナーの外側をすり鉢状に迫り上げた傾斜のこと、及びそのようなコーナーのこと。オーバルトラックでは全コーナーがこれで形成されている。ときにはバンク角が45度を超えるバンクも存在する。斜面を舗装する技術が確立される以前は木製板張りのもの(ボードトラック)もあった。また、オーバルコースそのものをバンクと呼ぶこともある(競輪などでこの傾向がある)。通常のコーナーでも緩くバンクが付けられていることも多い(水はけ等の理由もある)。なお、「逆バンク」は鈴鹿のそれが有名だが、これはほぼ水平であることから逆にバンクが付いているように感じられる、という意味でそう呼ばれるようになったもので、必ずしも一般的な名称ではない。







シンガポール市街地コースのこぶ付き縁石



縁石

コースとランオフエリアの境界を示す踏み板で、おもに車両が切れ込むコーナーの内側と、車両が立ち上がっていくコーナーの外側に設置される。サーキット用のものは視認性を高めるよう2色に塗り分けられている。表面に凸凹が刻まれていたり、ソーセージ型に膨らんでいる場合もあって、縁石を踏んでしまうことでスピンや車体の破損を招くことがある。




インフィールドセクション

本来のコースの内側に延伸された地帯のこと。多くの場合は、本来単純な形状であったサーキットの内側に、複雑な形状のコースを延伸して作られる。そのため外周にあたるコースに比べてスロットル全開区間が短く、ドライバーの技量が問われるとされている。オーバルコースのインディアナポリスや、飛行場が前身のシルバーストンのように、単純な形状のものに増設されて設置されることが多いが、インテルラゴスのように、逆にインフィールドセクションが大幅に短く改修されたこともある。



安全設備


競技中に車両がコースアウトした場合に、コースと観客席を仕切る金網やコンクリート壁にそのまま激突すると、観客を巻き込むなどする危険な事故につながる。そこで安全設備を設けてスピードを落とし、激突を防いだり激突の際の衝撃を和らげたりする。



ランオフエリア

走行路の外側にある退避スペース。コーナーをはみ出した車両が安全に減速したり、故障した車両を停車する際などに利用する。ストレートの先に大きく減速するコーナーがある場合(例 : 富士スピードウェイなど)は、減速し切れなかった場合のために、ストレートの延長線上に退避路(エスケープゾーン)を設けている。

グリーン


芝生を植えたランオフエリア。車両へのダメージは少ないが、減速度も低いため、コーナーに設置する際は大きな面積が必要となる。

サンドトラップ、グラベルベッド

サンドトラップは波打たせた砂場、グラベルベッドは砂利または土を敷き詰めた場所。単にグラベルとも呼ばれることもある。ナンバー付き車両での速度域で、グラベルに突入した場合は素晴らしい減速力を持つが、その一方で車両横転の危険性もある。




バリア




タラデガ・スーパースピードウェイのSAFERバリア


ガードレールやコンクリートウォールの前に置き、ランオフエリアを突っ切った車両が衝突する際の衝撃を吸収するもの。

スポンジバリア

ウレタンスポンジをそのまま、もしくはカバーに入れて壁の前(コース側)に並べたもの。衝撃吸収性は高いが、突っ込んだ際に反動で車両が跳ね返りコースに侵入したりバリアが飛び散る、火災で燃える等の危険性がある。

タイヤバリア

専用のタイヤを積んで壁の前(コース側)に並べたもの。使い古したタイヤの再利用と思われがちだが、使い古したタイヤは硬くなっているためクッション性がなく極めて危険であり、全て新品を使用する。現在はゴムベルトを巻いた物が主流だが、これは鈴鹿サーキットがタイヤがむき出しだとタイヤの間に車両が食い込んでしまうとして独自に研究、開発したものである[4]。場所によっては、タイヤだけではショックを吸収しきれないとして、スポンジバリアを併用したものを使用している。

ストローバリア

藁の束。1970年代以前は多くのサーキットで使用されたが、燃えやすくマシンから出火した場合は大変危険であるため、タイヤバリアやスポンジバリアに置き換えられ、近年では地方の小さなイベント等以外で目にする事はまず無い。

SAFERバリア


インディ・レーシング・リーグ (IRL) が主体となって開発した衝撃吸収素材のバリア。SAFERとはSteel And Form Energy Reductionの略。ランオフエリアが存在せず、高速クラッシュが発生しやすいオーバルトラックで採用され、新設されたロードコースでも導入するケースが増えている。




キャッチフェンス

木の杭を立てて網を張り、車両を受け止めるもの。かつてのサーキットの多くではグラベル等が設置されていてもコースとガードレールが非常に近く、コースアウトの際にグラベルで止まりきれず壁に激突してしまう可能性が非常に高かった。そのため1970年代前半からグラベルにキャッチフェンスが設置され、設置場所によっては3重にも4重にも張られた。しかし2輪の場合は投げ出された生身のライダーが杭に直撃し怪我をする可能性が非常に高く、また4輪の場合も網が邪魔となってドライバーの脱出や救出が遅れる可能性が指摘されるようになり、1980年代中頃からガードレール等を後退させグラベルを拡幅する改修工事が世界各地で積極的に行われたため、キャッチフェンスは次第に撤去され、現代に於いて使われることは無くなった。


フォーミュラカーがサンドトラップやグラベルベッド、芝生上で横転した場合、ロールバーが地面にめり込みドライバーの頭部が地面に衝突する危険があることが指摘されるようになった。またフォーミュラカーは車高が低いために、砂地に突入すると車輪が空転してしまい、脱出できずにリタイアとなる可能性が高い。軽微な接触や運転ミスでリタイアとなることとなり、観客からは不満が多く寄せられるようになった。そのため近年のフォーミュラカーレース、とくにフォーミュラ1レースの行われるサーキットではランオフエリアをアスファルト舗装や人工芝に改修するケースが増えている。ただし、2輪レースではマシンから投げ出されたライダーが地面に落下する際、舗装面ではダメージが大きくなってしまう。2輪・4輪とも開催する鈴鹿サーキットでは、舗装とグラベルを組み合わせたハーフ&ハーフという方式を採用している。


また、グラベル突入後は、コース上に砂や小石をばら撒かないよう注意してピットに戻る必要がある。パドックで砂利を落とす、あるいはセッション終了まで待機し、グリーン上で前進後退を行なってある程度小石を落とすなど、サーキットによって運用が異なる。



運営設備





スポーツランドSUGOのピットレーン



ピット

競技車両の整備、修理などを行うスペース。競技中に修理や整備を行うこともあるため、メインコースとはピットロードで繋がっている。通常はメインストレート脇に存在するが、スウェーデンのアンデルストープのように、地形の制約などで、まれにそれ以外の位置に存在することもある。ピットレーンでは通過する車両とピットクルーが接近しているため、セッション中に立ち入りことのできる人員が制限されている。また、車両側にも速度制限が設けられている。

コントロールタワー

競技主催者や計時記録員及びコース監視監督員、並びに競技審査委員の部屋がある塔。コース全体が見渡せるようになっている。コントロールライン脇にある。

パルクフェルメ

車両保管場。レース前後の車検などはここで行われる。この直上に表彰台があることが多い。

パドック

語源は競馬における下見場。多くの場合ピット裏にあり、「トランスポーター」(車積載車)と呼ばれる各チームのトレーラーや、チームのミーティング用やドライバーの休息用、スポンサーや招待客の接待・交渉場所としてモーターホームなどが並んでいる。一般の観客は「パドックパス」を購入することで、パドックやピットの一部に入ることもできる。

ホスピタリティーエリア

ピット上やパドック内に設けられる、招待客用スペース。一般客はもとより、プレスの立ち入りも制限される場合があり、スポンサーやVIPらの社交場ともなっている。




ポスト



ポスト

コース脇の有人監視施設。レース中はコースマーシャルが常駐しており、コントロールタワーと相互に情報交換し、走行車両に対し、フラッグ(レース旗)で、追い越しの指示、事故や路面の状況、緊急車両の有無、タワーからの指令などを伝える。各種フラッグのほか、消火器、オイル処理用の石灰、散乱物除去用のほうきを装備する。隣り合ったポスト同士は目視できる位置にあり、濃霧などでポスト間の視認が不可能な場合、レースは中断、または中止となる。

メディカル

サーキットとしてある一定以上の格式を認定されるためには、走行前のメディカルチェックや、事故により負傷者が出た場合の対応として、ある程度の応急処置ができる医務室、救急車の常備、救急搬送用のヘリポートの設置が義務づけられている。



分類


サーキットの設置方法や形状により分類が出来る。しかし、設置方法による分類及び国際自動車連盟 (FIA) によるカテゴライズ以外はこれといって明確な判断基準があるわけではなく、ファンや記者、競技者、主催者などの関係者が便宜的に呼び分けるものであり、開催・統括サイドでこれといって明文化された条件によって分類しているわけでもない。


競技用ではないが、類似の施設が二輪車、自動車メーカー、および関連企業・団体などにも試験路(テストコース)として存在する。バンク付きのオーバルコースを「高速周回路」、直線や曲線、起伏を複合したものを「ハンドリング路」などと呼ぶ。これらは原則非公開で、観客席などを持たない代わりに、各種試験のための特殊舗装や不整路面、散水設備などを備えるものが多い。



施設レベルによる分類


国際的なモータースポーツ統括団体である国際自動車連盟 (FIA) では、自動車レースに使用するサーキットをサーキットの規模や付帯設備などの状況により以下のように分類している[5]。グレード1Tを除き、上位グレードのサーキットは下位グレードの全てのレースを開催することが可能。


なおこれらのグレードの取得のためにはFIAによる査察を受ける必要がある。国内格式のレースを開催するには、日本の場合日本自動車連盟 (JAF) による公認を取るのみでよいため[6]、日本国内でFIAのグレードを取得しているサーキットはごく少数(2009年現在は7箇所)に限られる。



グレード1


F1を開催できるグレード。

グレード1T

F1のテスト走行を実施できるグレード。本グレードのみ他のグレードに対する上位互換性を持たないため、下位グレードのレースは開催できない。

グレード2


排気量2500cc以上のエンジンを搭載したフォーミュラカーのレース(F1を除く。主にGP2・F3000等)、同じく排気量2500cc以上のエンジンを搭載したスポーツカー(主にプロトタイプレーシングカー)レース、FIA GT選手権などを開催できるグレード。

グレード3

排気量2500cc以下のエンジンを搭載したフォーミュラカーのレース(グレード1・2に該当するカテゴリは除く)、同じくスポーツカーレース(グレード2に該当するカテゴリは除く)を開催できるグレード。

グレード4

排気量2000cc以下のエンジンを搭載したフォーミュラカー(主にF3)及びスポーツカーのレース、並びにグループA・グループNのレースを開催できるグレード。

グレード5


代替エネルギー自動車のレースを開催するサーキットのためのグレード。

グレード6


オフロードレース用サーキットのグレード。



設置方法による分類



パーマネントサーキット


競技専用施設として設計・造成・建設・管理されている常設コース。競技車両以外の走行が認められない事からクローズドサーキットとも呼ばれる。広大な用地を確保するため、基本的には郊外に立地する。コースデザインの自由度が高く、低速から高速までバラエティに富んだコーナーを配置することが可能である。


路面には摩擦係数の高い専用舗装が施され、レースに適した路面状態を保っている。また、コースに沿ってランオフエリアやバリア等の安全施設を常備し、常時救急体制を備えることで、安全性が高められている。



仮設サーキット(市街地コース、公道コース)



レースイベントの開催期間中のみ、主催者が一般の公道を借り切って設営する非常設コース。あらかじめ仮設の観客席やフェンス等を準備しておき、イベント期間中は一般車輌の通行を禁止してレースコースとする。モンテカルロ市街地コースやギア・サーキットなど市街地に作られた臨時サーキットをストリートサーキットと呼ぶ。


一般道という特性上、常設コースに比べてランオフエリアが狭くなるため、平均速度を低く抑えるようなコース設定となる。路面のミューは低く、建造物で見晴らしは悪く、コースはガードレールに囲まれているので、一瞬のミスでリタイアする可能性が高くなっており過酷である。



複合型、その他


ル・マン24時間レースが行われるサルト・サーキットは、常設コースと公道区間を組み合わせたコースである。F1で有名なベルギーのスパ・フランコルシャンもかつては同様であったが、旧公道部分の脇にバイパスが設けられ、現在は完全なクローズド・サーキットである。


オーストラリア・メルボルンのアルバート・パーク・サーキットやカナダ・モントリオールのジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、ふだん一般に開放された公園内の道路である。また、インディカー・シリーズのエドモントン・インディでは、エドモントン市中央空港の滑走路を利用した特設コースでレースが行われている。F1ラスベガスGPは、シーザースパレスホテルの大型駐車場に特設コースが設けられた。


ドイツのユーロスピードウェイ・ラウジッツは、オーバルコースとロードコースの他、サーキットに併設されたテストトラックを組み合わせる事によって、数種類のコースレイアウトを設定する事が可能な設計となっている。その為、それぞれのコースに連絡路が設けられている。



形状による分類



ロードコース


大小のコーナーと長短の直線を組み合わせて、減速・コーナリング・加速を繰り返すテクニカル指向の強いサーキット。フォーミュラカー、ツーリングカー、GTカー、一般車両など様々な車両によりレースが開催される。


使用時の周回方向は、計時施設やコース形状・安全対策等の理由から、基本的に片方向に定められており、カーブの外側の防護設備等は片方向走行を前提として設備されている。ただし、一部のレース[7]あるいはレース以外のイベント時・テスト等はこの限りではない。方向が定められている場合は、北半球では多くの場合は右回り(時計回り)であるが、南半球および北米では左回りも多見される。



オーバルトラック



直線をバンク(傾斜)の付いたターンでつないだサーキット(トラック)で、オーバル(楕円形)、またはそれに類似した形状をもつ。アメリカに多数存在し、NASCARやインディカーなどアメリカ型モータースポーツの花形である。走行方向は左回り。いかに高速を維持したまま走り続けられるかを競うコースであり、1周のラップタイムよりも平均速度が基準とされる。



複合型


日本のツインリンクもてぎなど、ロードコースとオーバルの両方を兼ね備えるサーキット。もてぎではこれらを別々に使用するが、かつてのモンツァ・サーキットは周回ごとに交互に走行していた(現在はオーバル部分は閉鎖)。また、インディアナポリス・モーター・スピードウェイやデイトナ・インターナショナル・スピードウェイはオーバルの内側にテクニカルなインフィールドセクションがあり、インディアナポリスグランプリ (MotoGP) やデイトナ24時間レースではオーバルと組み合わせて使用する。



ドラッグレーストラック


ドラッグレース (Drag racing)、国内では通称ゼロヨンを実施するための直線コース。狭義のサーキット(周回走路)には含まれないが、レースを開催する場所という意味ではサーキットの一種である。


1/4マイルもしくは400m、あるいは1000mのものなど様々なものがあるが、平坦な直線にスタートラインとゴールライン、レース用の設備、そして観客用スタンドから構成される。その他の付帯設備は規模や施設差が大きいが、基本的にサーキットであることには変わらない。



路面による分類



オンロード


路面がアスファルト、コンクリート等のいわゆる道路然としたもので舗装されたサーキット。通常、単純にサーキットといえば、ほぼ例外なくこちらを指す。



オフロード


路面が土(ダート)、砂(グラベル)等で形成されたサーキット。トラック・コースなどと呼ぶ場合が多く、サーキットとは呼ばないことが多い。多くの場合、円または楕円形然とした単純な形状であるか、8の字状である。アメリカやスペインには多数点在し、バギーや改造市販車でアマチュアレースが行われることが多い。


その他、トライアルやラリー競技に使用する周回コースは、サーキットと同様の目的があるにもかかわらず通常はサーキットと呼ばれない。おおむね、カーブや緩やかな上り下り以外の、段差・山や水濠・各種トラップなどの障害設備があるかないかで、サーキットと呼ぶかどうか分かれる。



大きさや設備による分類



フルサーキット


一般に国際競技を開催できる規格を満たしたサーキットを指し、十分なポストやセイフティゾーン(グラベル、バリア等)を備え、パドックやピットなども充実している。コース全長は一般的に5キロメートル以上であるが、一部をショートカットして使用する事もある。競技を開催する関係で大きな観客席を備えている。設備の関係で利用料金が高額になりがちである。



ハーフサーキット


あまり使われない用語であるが、一般に国内競技を開催できる規格を満たしたサーキットであり、かつ、コース長が2キロメートル程度のものを指す言葉である。ハーフサーキットの条件を満たすコースとして筑波サーキットが有名である。



ミニサーキット


一般に、レースを開催するための規格を満たさないコース。従って公式なレースを開催することはできないが、非公式レース(いわゆる草レース)や走行会を開催したり、趣味でコースを走ったり、車両テストに使用したりといった用途に使われる。近年ではドリフト走行イベント(D1GP、ドリフトマッスル等)の公式競技会の会場に使われることも増えている。


一般に、コースは500メートルから1キロメートル程度と短いものが多い。設備が少ないことやコースが短いことなどから使用料金が安く、気軽に使用できることが最大の特徴であるが、十分な数のスタッフがそろっていない場合もあり、利用者自身が配慮を必要とすることもある。



使用目的による分類



カートコース


レーシングカート専用のコース。コース幅が小さく、安全設備も簡単であり、四輪車両(フォーミュラカーを含む)や大半の二輪車両の走行には向かない。50cc程度の二輪車でも走ることができるコースもある。設備が簡単であることから使用料金が安く、またカート等をレンタルできることが多いために気軽に楽しむことができる。



その他


その他、明確な分類でなかったり、特定の形状のものに対して「〜型」と呼ばれるなど、ある意味曖昧なサーキットの分類について以下の通り説明する。



ヨーロピアンサーキット

ヨーロッパの郊外のワインディングロードをなぞる形で、高低差や曲がりくねったコーナーが多く、ドライビングの難易度が高いサーキット。ニュルブルクリンク北コースが有名。

ストップ・アンド・ゴー

ストレートと回転半径の小さいコーナーとが繰り返されるサーキットのことを、運転中にスロットル全開とフルブレーキを繰り返すことからそう呼ばれる。

ミッキーマウスサーキット

英語のスラング「ミッキーマウス」には「つまらない」や「退屈な」という意味が込められており、ドライバーにとって単調で面白みのないサーキットを揶揄してこう呼ばれる。細かいコーナーが続き、長いストレートがないサーキットがこう呼ばれることが多いため、そのようなサーキットを指す言葉と誤解されがちだが、実際にはオーバーテイクが困難で、これと言った見せ場のないサーキットに用いられる。

ティルケサーキット

近年のサーキットデザインを数多く引き受けているヘルマン・ティルケが設計したサーキットの通称。最新の安全基準を満たし、オーバーテイクの機会を増やす工夫もなされているが、シルバーストン・サーキットやスパ・フランコルシャン、鈴鹿サーキットのようなオールドコースに比べると人気が低い。


その他、平均速度やアクセル全開率、ブレーキ頻度等の傾向からハイスピードサーキット、テクニカルサーキットなどの分類も用いられるが、形状による分類以上に明確な基準はない。



歴史


19世紀末にモータースポーツが始まった頃、ヨーロッパでは都市と都市の間の公道を走行する「都市間レース」が盛んだった。しかし、沿道の観客を巻き込む死傷事故が多発したことから、郊外の土地に周回路を設定した「サーキットレース」が始まり、1907年にはイギリスサリー州に競技専用施設ブルックランズ・サーキットがオープン。観客にとっても周回路では走行する車両を何回も見ることができるというメリットがあり、以後は専用サーキットでのレースが増えていった。ミッレ・ミリアやタルガ・フローリオといった伝統ある公道レースも安全面から廃止に至ったが、モナコグランプリのような市街地レースは観光行事として定着することになる。かつては1周10km以上ものロングコースやほぼ直線のみの超高速コースが存在したが、こちらも安全面から距離を短縮したり、コーナー数を増やすなどして姿を変えていった。


一方、アメリカでは草競馬場でのレースを発祥とする楕円形のオーバルトラックが各地に建設され、インディカーやNASCARの開催地として今日に至るまで主流を占めている(インディアナポリス・モーター・スピードウェイは1909年にオープン)。第二次世界大戦後、欧州からの復員兵によってスポーツカーレースが紹介されると、ヨーロッパタイプのロードコースも建設されるようになった。


近年は自動車市場のグローバル化により、日本以外のアジア各国でもレースを開催する機会が増え、新たにサーキットを建設する国が増えている。



日本


日本ではかつて初期のモータースポーツに於いてはアメリカ式のオーバルトラックが主流であったが、後にヨーロピアンタイプが主体となり、後にツインリンクもてぎが開業するまでオーバルは重視されなくなっていた。


多摩川スピードウェイや浅間高原自動車テストコースといった未舗装路を経て、戦後のモータリゼーション勃興期に鈴鹿サーキット(1962年)と富士スピードウェイ(1966年)という東西の主要サーキットが開業した。その後、不動産事業や地方振興策の一環として各地に建設が進み、1980年代後半のバブル景気下でのモータースポーツブームにピークを迎えるが、バブル崩壊と景気悪化により以後は停滞期に入っている。


また、地方自治体による公道レースの誘致も何度か計画されたが、道路交通法との兼ね合いなどが難しく実現していない。



  • 1982年、別府市が国際観光港周辺でF2レース開催を計画。大会名称は「別府国際モータースポーツカーニバル」。ビクトリーサークルクラブ (VICIC) の協力により、日本自動車連盟 (JAF) へ1983年の国内レースカレンダー登録申請を行なったが実現せず[8]

  • 1985年、横浜市青年会議所がF1を誘致し、山下公園周辺で横浜グランプリを開催する計画を発表したが(のちに造成中のみなとみらい地区へ変更)、鈴鹿サーキットとの誘致競争に敗れて幻になった[8][9]


  • 小樽市の「小樽グランプリ構想」が内閣府の地域再生計画で認定され、2007年のチャンプカー誘致活動が行われていたが[10]、チャンプカーシリーズの消滅により頓挫した。



サーキットの課題



騒音


サーキットの周辺に住居がある場合は、サーキットの競技車両が発生するマフラー排気音、ブレーキ音、タイヤの摩擦音などが騒音発生源となり、著しく住環境を破壊する。日本ではサーキットの騒音を規制する法規制はない。サーキットが周辺地域住民と騒音でトラブルになるケースが多く、サーキットの建設には十分に地域環境を考慮した場所を選択する必要がある。



交通


常設サーキットの場合、前述の騒音問題や土地の購入費などが絡んで、たいてい人口密度の低い地域に建設されることが多い。鉄道・バスなどの公共交通機関や宿泊施設が不足している場所では、レース期間中に観客がマイカーで来場して大渋滞を引き起こすこともある。対策として、サーキットから離れた場所からシャトルバスでピストン輸送する「パークアンドライド」を採用するもあるが、F1の2007年日本GPでは悪天候により輸送計画が破綻して社会問題となった。


市街地コースの場合、輸送や宿泊の問題は発生しないが、レース期間中は一般道を長時間閉鎖するため、公的機関の協力や住民の理解が必要となる。



経営


サーキットの主たる財源は観客の入場料収入であり、レース開催期間以外は人件費や保守管理費が負担となる。そのため、近年はイベントを開催したり、ホテルやレジャー施設を併設するなどして、レース以外での収益を確保しようとしている。


しかし、独自会計が立ち行かず、自治体に援助を要請するケースもある。世界的に知られるドイツのニュルブルクリンクも施設改修が負担となり、2012年に破産宣告を受けラインラント・プファルツ州の管理下に置かれた。



脚注






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  1. ^ プログレッシブ英和中辞典(第4版)(コトバンク)


  2. ^ autoの"o"にアクセントが付けられ「アウトードロモ」と発音するが[1]、日本の出版・放送メディアでは「アウトドローモ」と表記・発音するケースが多い。


  3. ^ 単に「サーキット」と通称された浅間高原自動車テストコースは未舗装であった


  4. ^ 「F1速報PLUS Vol.22」P.82、2012年、三栄書房


  5. ^ 詳しくはFIA International Sporting Code Appendix O(英語版 (PDF)日本語版(JAFによる翻訳) (PDF) )を参照。


  6. ^ JAF国内レーシングコースの公認に関する規定


  7. ^ 一例として鈴鹿サーキットは、自転車には危険な下りコーナーになる箇所があるため、自転車の大会では逆回りになる

  8. ^ ab『カーグラフィック 2006年1月号』、二玄社、2005年、265-266頁(コースレイアウト案の地図掲載)。


  9. ^ 城島明彦「もうひとつの、J-GP。グランプリ開催への果てしなき夢と現実。」『F1グランプリ特集 11月号増刊』、ソニーマガジンズ、1993年、62-63頁。


  10. ^ "チャンプ・カーの北海道小樽市視察レポート". US-RACING.(2005年3月12日)2013年11月24日閲覧。




関連項目




  • サーキット一覧
    • 日本のサーキット一覧


  • 自動車競技

  • オートバイ競技




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