漢籍
漢籍(かんせき)とは、漢文で書かれた中国の書籍を指す言葉である。狭義には中国人の著作のみを指すが、場合によっては、日本人の書いたものも含め、漢文で書かれたものは漢籍と総称される場合がある。[要出典]
目次
1 概要
2 漢籍の分類
3 出版事項
4 装幀による分類
5 脚注
6 参考文献
7 外部リンク
概要
一般的には、近代になって出版された新しい学問体系に従って書かれたものは含まれない。本来は袋とじにして糸で綴じた線装本(各国で糸の綴じ方が違い、日本のものを和装本と言う)であることが多かったが、近代以降に出版したものには洋装本が多い。
中国で出版された書を日本で復刻・翻刻したものは「和刻本」と呼ぶ。また朝鮮半島で出版されたものは「韓本(朝鮮本・高麗本)」、ベトナムで出版されたものは「安南本(越南本)」と呼ぶ[1]。和刻本に対して、中国で出版されたものを特に「唐本」と呼ぶこともある。
また、和書と漢籍をあわせた総称として、和漢書という用語もある。
漢籍の分類
漢籍は通常、中国の伝統的な図書分類法である経・史・子・集という四部分類で分類される。その模範となる『四庫全書総目提要』の分類に従いつつ、その不備を補うかたちで各所蔵機関で独自の分類がとられている。なお漢訳仏典については子部・釈家類に入れられることもあるが、漢籍から独立させられ、仏典独自の分類がされることが多い。
日本で標準的に参照されることの多い京都大学人文科学研究所や東京大学東洋文化研究所の漢籍目録では、四部分類に叢書部を加えて五部とし、近代の書籍は別に新学部を設けてそこに日本十進分類法に従って収める。また集部に小説類を設けて白話小説をそこに収め、伝統的な筆記小説(子部小説家)とは分ける、などの工夫を加えている。
出版事項
漢籍は印刷方法により、次のような種類に分けられる。
刊本 - 木版印刷によるもの。多くの漢籍がこれに属する。刻本・版本とも言う。
鈔本(抄本) - 手書きによって書き写された本。写本。
活字印本 - 古活字によって印刷されたもの。古活字には泥活字・錫活字・木活字・銅活字・磁活字がある。
石印本 - リトグラフ。薬品入りの墨で紙に手書きし、それを石版に転写して印刷した本。
排印本 - 近代活字によって印刷されたもの。装幀は線装も洋装も、どちらも存在する。特に鉛活字のものを鉛印本と呼ぶ。
いったん出版された本を複製する場合には次のような用語が使われる。
景刊(えいかん) - 底本を版木にかぶせ彫りして印刷したもの。原寸大で字体・字数など全く同じもの。
景照(えいしょう) - 底本を写真撮影し、それをとじ合わせ本にしたもの。学術利用が主である。
景印(えいいん) - 底本を写真撮影してオフセット版などを作り、それを大量印刷したもの。縮小・拡大印刷することができ、洋装本のかたちで出版されることが多い。影印とも書く。
装幀による分類
漢籍は装幀法により、次のような種類に分けられる。
- 巻子本 - いわゆる巻物
- 帖装本 - 折子本とも。いわゆる折り本
- 龍鱗装 - 巻子本と冊子本の中間形態で、紙の両面に字を書き、前葉の裏に少しずつずらして貼り付けたもの。書物全体は巻物と同じように巻くことができるが、紙をめくって見られる。故宮博物院蔵の『王仁昫刊謬補欠切韻』(完本王韻)によって知られる[2]。
- 冊子本 - いわゆる本
- 蝴蝶装本 - 粘葉装とも。紙を二つ折りして重ね、折り目部分を背にして糊付けしたもの。
- 列帖装本 - 綴葉装とも。数枚の紙をまとめて二つ折りし、折り目部分に穴を開けて糸で綴ったもの。日本独自の装幀法。
- 包背装本 - いわゆるくるみ表紙。紙を二つ折りにして重ね、折り目部分を下綴じの後、一枚の表紙でくるんで表・背・裏全体に糊付けしたもの。『永楽大典』『四庫全書』がこの装幀方法をとる。
- 線装本 - 袋綴本とも。いわゆる和綴。紙を二つ折りにして重ね、折り目と反対側を下綴じの後、表紙で挟んで糸で綴じたもの。
- 明朝綴 - 四つ目綴。
- 朝鮮綴 - 五つ目綴。
- 康熙綴 - 六つ目綴。
脚注
^ 武田(2008) p.9
^ 『“龙鳞装”的试制』 故宮博物院。http://www.dpm.org.cn/shtml/400/@/64898.html。
参考文献
- 武田時昌 「総説 漢籍の時空と魅力」『漢籍はおもしろい』 京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター、研文出版〈京大人文研漢籍セミナー 1〉、2008年。ISBN 978-4-87636-280-6。
外部リンク
桂五十郎 『漢籍解題』 明治書院、1906年、2版。
『WEB漢籍解題』 青蛙亭漢語塾。http://www.seiwatei.net/iso/iso.cgi。 (検索可能)
『全國漢籍データベース』 京都大學 人文科學研究所 附屬 漢字情報研究センター。http://kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/kanseki。