ツーリングカー
ツーリングカー (Touring Car) は、自動車のカテゴリの一つ。一般的にはスポーツカーに対して、その他の通常の乗用車を指す言葉として用いられる。
目次
1 自動車黎明期のツーリングカー
2 JISによる規定
3 モータースポーツ
3.1 主なツーリングカーの選手権
3.1.1 現行の選手権
3.1.2 過去の選手権
4 脚注
5 関連項目
自動車黎明期のツーリングカー
ツーリングカー (touring car) とは20世紀初頭に広く使用された乗用車のボディスタイル。ツアラー(tourer)ともよばれ、ラナバウト、ロードスターに比べ大型のもの。屋根のないオープンカースタイルであり、通常は、(のちにコンバーチブルトップと呼ばれるようになる)折りたたみ式の幌が付けられていた。当時ツーリングカーとよばれた乗用車は、ほとんどが後部にトノーと呼ばれるシート部を装備し、これにより4人以上の乗員を確保していた。初期のツーリングカーではエンジンは、車両前方だけでなく車両中央座席下部に配置されたものもあった。このツーリングカーは、その後、現代的なセダン・サルーンのボディ・スタイルにつながる。
ツーリングカーという乗用車ボディスタイルは、米国では、1910年代半ばまでには4ドアであったり、折りたたみ式幌が付属したりと、様々なバリエーションが作られるようになり、当時提供されていたボディスタイルの中で最も広く一般に普及していたタイプであった。
1908年から1927年にかけてフォード社が生産したフォード・モデルTではその多くは5人乗りツーリングカーであった。これは当初4ドア車だったが、のちに運転席外側に予備ホイールが常設されるようになり運転手が助手席から乗り込む3ドアのツーリングカーとなっている。18年以上もの間生産された乗用車、トラック、シャーシモデル合わせて1500万台ほど製造されたT型のうち、6,519,643台(約652万台)がこのツーリングカーであった。およそ44%がツーリングカーということになる。次いで多く生産されたタイプはトラックである。
特定モデルにはサイド・カーテンも付属していた。これは乗員を悪天候時に保護するためのものである。これが装備されていない車の場合、ドライバーと同乗者は自然に立ち向かわなければならなかった。折りたたまれた屋根(トップ)は、後席の後ろ側に「大きくかさばったでっぱり」となって畳まれ、これは「ファン(fan)」とよばれていた。屋根(幌)とその木製の支柱を保護するために「ファンカバー(fan covers)」が使用された。
ツーリングカーは米国では1920年代初頭には衰退しはじめる。それは乗車部分が覆われたクローズドタイプの乗用車がより手に入りやすい値段となってきたからだった。こうしてオープンカーが主流だった時代が米国では終わることになった。クロースドタイプが当たり前になって以降は、逆にクローズドタイプをツーリングカーとよぶようになった。
JISによる規定
日本工業規格(JIS)において、乗用車の区別の一形態として、スポーツカーとツーリングカーを規定している。
- スポーツカー (sports car)
- 運転を楽しむために作られた軽快な乗用車または乗用自動車。
- ツーリングカー (touring car)
- 普通に実用されている乗用車または乗用自動車(“スポーツカー”に対する用語) 。
自動車関連の規格として、社団法人自動車技術会が原案を作成しJISが取りまとめたものの一部であり、上記規定は乗用車のカテゴリー分類における切り口の一つである。
JISの規定としては記載されていないが、「車両の仕様の違い」および「運転の目的の違い」からこの区別がなされると考えられる。一般的な乗用車はほとんどがスポーツカーもしくはツーリングカーに分類され、その多くは実用車でありそれはツーリングカーに分類されることとなる。
モータースポーツ
市販車・市販車を改造したマシン・市販車のような外見をしたマシンで行うサーキットレースをツーリングカーレースと呼び、そのレースに使用される車をツーリングカーと呼ぶ。一般的にフォーミュラカーに対する言葉として用いられるため、上記JIS定義と異なりスポーツカーでも広義のツーリングカーに含まれる。
モータースポーツではベース車両が市販車(=量産車)と呼べるものかどうかがツーリングカーの定義としては重要なので、ベース車の最低生産台数が規定されている。逆に法律上は公道走行可能だが市販車バージョンが数台程度しかない(≠量産車)上、空力的にも突き詰められた車両は「プロトタイプレーシングカー」に分類される。また大規模な改造を施したスポーツクーペや大排気量のスポーツクーペ・スーパーカーのレースはツーリングカーの範疇ではあるものの、呼称は「GT(グランドツーリングカー)」が用いられるのが一般的である。ちなみにル・マンやデイトナ24時間のように、プロトタイプレーシングカーとGTが混走する場合はスポーツカーレースと呼ばれる。
日本では車検証の車型欄で、セダン、クーペ、ハードトップが「箱型」に分類されていることから、箱レーサーや箱車(はこしゃ)とも呼ばれ、自動車雑誌などでは専らハコ車と表記される。また、ツーリングガーレースを専門とするドライバーや、フォーミュラカーレースの成績が平均程度で、ツーリングカーレースとなると強さを発揮するドライバーを「ハコ遣い」と呼ぶこともある。
改造できる部分の少ないグループNやショールーム・ストックから、アンリミテッドと呼ばれる改造無制限ものまで、それぞれの主催者やレースにおいて車両への改造範囲が規定されている。ほとんどが市販車の「構造」から大きく逸脱しないように考慮されているが、中にはNASCARやドラッグレーサー、末期のグループBカーなど、一見した印象以外はフレーム構造から全く市販車と異なるような車となっている車両もある。NASCARのマシンは「ストックカー」、ドラッグレーサーは「ファニーカー」と読んで区別されるが、広義のツーリングカーに含まれることもある。逆にグループNのような、ほぼ市販車そのままの無改造のツーリングカーは「プロダクションカー」と呼ばれる。
ツーリングカーレースの車両はアマチュア色の強いレースほど市販状態に近く、プロフェッショナルレースに近づくにつれて改造度合いが大きくなる傾向にある。これは観衆としてもプロドライバーとしても速度の速いマシンの方が興味を増すというのが表向きの理由であるが、市販状態に近いとホモロゲーション条件を高いレベルでクリアする(=戦闘力の高いベース車両を大量に売る)必要があるため、メーカーの負担が増すからというのも重大な理由である。
近年はメーカーが開発したマシンをプライベーターに販売するTCRが世界中で人気を博している。その勢いはワークスマシンで開催されていたツーリングカーレースの最高峰のWTCCを消滅させて、TCRによるワールドカップ(WTCR)を誕生させるまでに至った。
2018年現在のFIAのツーリングカー向け規定としては、グループA、グループN、グループR、グループGT3、グループRGTなどが挙げられる。またラリー、ラリークロス、トライアル、ジムカーナなどもツーリングカーで行われるのが一般的である。
主なツーリングカーの選手権
ここではセダンなど4座席のツーリングカーが用いられているカテゴリを記載する。GTやストックカーについては当該記事を参照のこと。
現行の選手権
- 世界ツーリングカーカップ(WTCR、旧TCRインターナショナル)
イギリスツーリングカー選手権(BTCC)- スウェーデンツーリングカー選手権(STCC)
- イタリアスーパーツーリズモ選手権(CIVT)
- 豪州スーパーカーシリーズ
- スーパー耐久
- ピレリ・ワールド・チャレンジ(PWC)
- コンチネンタル・タイヤ・スポーツカー・チャレンジ(CTSC)
- 中国ツーリングカー選手権(CTCC)
- タイツーリングカー選手権
- アルゼンチン・スーパーTC2000
過去の選手権
世界ツーリングカー選手権(WTCC:1987年、2005〜2017年)
ヨーロッパツーリングカー選手権(ETC:1963~1988年、ETCC:2002~2004年)
全日本ツーリングカー選手権(JTC:1985~1993年、JTCC:1994~1998年)
ドイツツーリングカー選手権(第1期)(DTM:1984~1996年)
国際ツーリングカー選手権(ITC:1995~1996年)
ドイツツーリングカー選手権(第2期)(DTM:2000~2011年[1])
脚注
^ 2012年以降はシルエットカーへ移行している。
関連項目
- ツーリング
- グランツーリスモ
- スポーツカー
グループA - 1990年代半ばまでツーリングカー選手権の規定として用いられた