T-72



































































T-72

TankBiathlon2016opening-48.jpg
最新のT-72B3

性能諸元
全長
9.53 m
車体長
6.86 m
全幅
3.59 m
全高
2.19 m(T-72A)
2.23 m(T-72B及びT-72M1)
2.22 m(T-72B3及びT-72S)
重量
41.5 t(T-72A)
46t(T-72B3)
懸架方式
トーションバー方式
速度
60 km/h(T-72A)
70 km/h(T-72B3)(整地)
45 km/h(不整地)
行動距離
450 km
600 km(外部タンク搭載時)
主砲
125 mm滑腔砲 2A46M
副武装
7.62 mm機関銃PKT(同軸)
12.7 mm重機関銃NSVT(対空)
装甲
複合装甲
- 車体前面200mm 砲塔前面280mm(T-72A)
- 車体前面236 mm 砲塔前面296 mm(T-72B)
正味の厚さで、均質圧延鋼板換算では400 - 600 mmと推定
エンジン

V-46 V型12気筒ディーゼル(T-72A)
780 hp(T-72A)


V-92エンジン(T-72B3)
1,000hp(T-72B3)
乗員
3名
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T-72(ロシア語:Т-72テー・セーミヂェシャト・ドヴァー)は、1971年にソビエト連邦で開発された主力戦車である。ロシアでは「ウラル」(Урал)と言う愛称がある。




目次






  • 1 概要


  • 2 構成


    • 2.1 主砲


    • 2.2 装甲


    • 2.3 エンジン


    • 2.4 重量




  • 3 弱点


    • 3.1 生存性


    • 3.2 砲の仰角俯角


    • 3.3 拡張性




  • 4 戦歴


    • 4.1 主な戦歴


    • 4.2 湾岸・イラク戦争において




  • 5 型式


  • 6 派生型


  • 7 使用国


  • 8 登場作品


    • 8.1 映画


    • 8.2 ゲーム


    • 8.3 書籍




  • 9 脚注


  • 10 関連項目


  • 11 外部リンク





概要




1983年の十月革命記念パレードに参加するT-72


1960年代、ソ連はT-64を新たな主力戦車として配備を進めていたが、当時の最新技術を詰め込んだ結果、5TDFディーゼルエンジンをはじめ自動装填装置の不具合など多くの問題点が露見、そして、最大の問題は生産コストの高さであり、充分な数を配備することが厳しい状態だった。


こうした中、T-64よりも堅実で安価な戦車の開発が、1967年からT-62の車体をベースとした「オブイェークト172」[1]として始まり、「オブイェークト172M」としてプロトタイプが完成した。1971年-1973年にかけ各種試験を経て正式にT-72として採用され、1974年よりチェリャビンスク・キーロフ戦車工場にて、従来のT-55およびT-62の生産ラインから全面的に切り替えられ、生産が開始された。ソ連以外の旧東側陣営でも生産され、総生産数は約25000両に及び、ロシア軍のT-72B3などを始め2010年代にも在来装備のT-72に性能向上の為の近代化改修が加えられて運用が続けられている他、改良型のT-90等が現在でも生産されている。


技術的にはアメリカのM60パットンや西ドイツのレオパルト1、イギリスのチーフテンと同じ第2世代主力戦車にあたる。74式戦車と同じ低い車体や亀型砲塔など、同世代戦車の中では攻撃力・機動力・防御力のバランスに優れているとされる。その後の第3世代主力戦車と比べると見劣りはするものの、前述の様に旧東側陣営で数多く生産された事もあり、現在も数多くの国々で使用されており、T-90などの改良型の開発も続けられている。


ソ連においては、T-72採用後数多くの改修を実施、1978年に高価で、1985年までは指揮官用T-72Kを中心にしか普及しなかったが、レーザー測遠器の装備が開始され、以降に生産されたT-72AVではエンジン馬力も780馬力から840馬力に強化、リアクティブアーマーやレーザー測遠器も生産当初から標準装備となり、主砲から対戦車ミサイルも発射可能となった。1979年にはT-64でも採用の複合素材装甲を車体前部中心に取り付け防御力を強化、1980年代にはリアクティブ・アーマーが追加された。


T-72は、旧共産主義圏にて、1970年代からソ連崩壊の1991年までもっとも多く使われた戦車であり、ワルシャワ条約機構加盟国以外にもフィンランド・イラン・イラク・シリアなどにも輸出され、インドやユーゴスラビアなど他の多くの国でもライセンス生産やコピー品が作られた。当時ワルシャワ条約機構に所属していたポーランドとチェコスロバキアでもライセンス生産されたが、オリジナルより装甲面などで性能が低下した代物だった。例えば、ポーランドで生産されたT-72Gはソ連軍のT-72では複合装甲だった砲塔前半部が410mmの通常装甲となっていた。ソ連でも1990年までに自国製の輸出用モデルが開発され、アラブ諸国を中心に大量輸出した。これもやはり装甲や砲弾の威力などが大幅スペックダウンした、いわゆるモンキーモデルであった。80年代にはイラクに対しチェコやポーランド、ソ連がT-72完成品を輸出。後には、半完成部品をノックダウン生産でイラクで組み上げて中国製の部品で改造も行い[2]、国産戦車を自称してバビロンの獅子(英語版)と命名された。またイラン・イラク戦争で使用した直輸入T-72の砲身寿命が短く、ソ連からの交換部品の供給も滞ったことから、イラク国内に砲身工場を作ることになり、これがライセンス生産化の始まりであったという。なお、ユーゴスラビア型のM-84はクウェートに輸出され湾岸戦争で対イラク戦に使用され、後にイラク戦争後の新生イラク軍(イラク治安部隊)にも導入されている。


ソ連崩壊以降は独立した諸国がそれぞれのT-72の生産技術を元に数多くのバリエーションを開発している。自国で生産したオリジナルタイプの輸出から既にT-72を購入した国への改修パッケージキットの販売など、その販売形態も広がっている。T-72自体が長期に渡り多くの国々に供給されたこともあり、ソ連から独立した諸国にとっては現在でも魅力的な軍事マーケットとなっている。



構成



主砲


125 mm 2A46M滑腔砲は、西側の120mm/L44滑腔砲と比較しても遜色ない威力とされ、有効射程は1,800 - 2,000メートル。戦車砲弾以外にも射程5,000メートルの9M119または9K120対戦車ミサイルを発射可能であり、ガンランチャーとしての機能を持つが、射撃管制装置の仕様によっては対戦車ミサイルに対応できない場合がある。


また、回転装填式自動装填装置[3]である6ETs40(ロシア語:6ЭЦ40)を搭載する。T-64では、水平に配置した弾頭と立てた姿勢の装薬筒をアームが拾い上げて装填する方式であったが、T-72では、弾頭と装薬筒の両方を水平に収納する回転ドラム式となった。当初は装填不良など信頼性に問題があったものの、改修型のT-90においては13秒間に3発もの砲弾を発射できるまでに改善されている。しかし、この装置のために車内居住性は相変わらず悪いものとなった。砲弾は弾頭と半焼尽薬莢(装薬)が分離されており、各々戦闘室直下に円状に配置され、それらをホイスト式の自動装填装置が拾い上げて装填する仕組みになっており、ルクレールや90式戦車が採用している弾頭/薬莢一体型の弾薬を用いる自動装填装置とは根本的に異なる。



装甲


砲塔部は鋳造製で、最も厚い部分で280 mmであったとされ、先端部で80 mmの装甲が施されていた。後にT-72B(M)から砲塔前面部に当時では珍しかった膨らみのある複合装甲が取り付けられた。西側では当時、この独特の「膨らみ」は女性の豊満なバストをイメージさせた事から、グラマーで有名な女性歌手ドリー・パートンの愛称で呼ばれた。


車体自体の前面部は鋼鉄装甲板にセラミックやガラス繊維などを織り込まれ、その厚さは200 mm程度だが、独特の傾斜デザイン(避弾経始)により、その効果は実質500 - 600 mm厚の圧延装甲板に匹敵する強度を実現した。それ以降も防御力を増すため成形炸薬弾(HEAT)に対し有効な爆発反応装甲が追加装備されている。


当初は履帯や車体側面を成形炸薬弾から守るためのサイドスカートが分割式の金属製であったが、破損しやすかったため、後に金網入りのゴム製に変更された。



エンジン


T-64のエンジン、および足回りの問題が発端で開発が始まった事もあり、ディーゼルエンジンは信頼性が高い第二次世界大戦時のBT-7MやT-34のV-2、それをT-44で横置き式に改良したV-44を500馬力から780馬力に引き上げ、オブイェークト172ではV-45、T-72ではV-46を採用している。


ソ連崩壊以降の各国のT-72のバリエーションタイプではそれぞれ独自のエンジン採用のため、馬力やシステムは各々異なっている。



重量


生産当初のT-72は41トンと西側諸国の主力戦車と比べて軽量であった。当時のワルシャワ条約機構下ではこの重さを基準に道路や橋を設計したと言われており、自軍の戦車が進行するには有利かつ、他国の戦車の侵攻を阻む地形になっていた。


車重が軽量なことから、780馬力にもかかわらず、ドイツのアウトバーンでは調速機を解除することで110km/hの路上最大速度を記録したと言われる。



弱点


125 mm滑腔砲や複合装甲を備えたT-72は前述のように攻撃力・防御力・機動力で同時代の他国の主力戦車を上回り、また、それらのバランスも優れていた一方で、以下のカタログデータには現れない弱点があった。



生存性




破壊されたグルジア軍のT-72(南オセチア紛争)


弾薬が戦闘室外のバスルに格納されている西側の第3世代戦車とは異なり、弾頭と装薬が別々に戦闘室直下にむき出しで円状に並べられるというレイアウトは被弾貫通時に誘爆を起こしやすいものとなった。実際、湾岸戦争やイラク戦争、チェチェン紛争やグルシア戦争において、砲塔が吹き飛び、弾薬庫が位置する車体中央下部が著しく損壊したT-72の映像や写真が多数公開されている。


なお、この欠点はモンキーモデル以外のT-72やT-64、T-80、T-90にも共通したもので、チェチェン紛争ではロシア連邦軍のT-72B(M)なども同様の破壊を受けている。



砲の仰角俯角


T-72に限らず、それ以前のソ連戦車にも共通する弱点ではあるが、T-72はそれまでのT-55やT-62から更に砲塔の小型化と長砲身化を進めたため、砲の上下の可動範囲が-5/+18度と狭く、山岳戦、市街戦になったチェチェン紛争ではビルや山の上に構築された陣地や、肉薄する歩兵に対する砲撃ができない状況が散見された。


歩兵への支援任務が圧倒的に多くなる途上国の紛争では、T-72よりも仰角俯角の大きく取れるT-54/55が現場では好まれるという。この欠点もモンキーモデル以外のT-72やT-64、T-80、T-90にも共通したものである。



拡張性


上記の強化された装甲厚や装備品は車内に向かってスペースを占め、狭い戦闘室は新しい装備や機材を追加導入する際の障害となった。


また、APFSDSは弾芯の長さに比例して貫通力が向上するため、他国は砲口径はそのままに弾芯の長さを可能な限り長くし貫通力を増すという手法で火力強化を行えるのに対し、T-72系列戦車は分離式砲弾であることと自動装填装置の機械的制約上、弾芯延長が困難である。これが後述する西側の120mm砲との貫通力差の要因となった。



戦歴


T-72の最初の実戦投入は、1979年のソビエト連邦によるアフガニスタン侵攻と考えられるが、ムジャーヒディーン相手のゲリラ戦であったため、戦車同士の交戦の機会は全くと言ってよいほど無く、アフガニスタン政府軍に供与されていなかった(アフガニスタン政府軍にはT-55とT-62を供与していた)ので、ソ連撤退後のアフガニスタン内戦で使用されることもなかった。


西側の主力戦車(MBT)と戦火を交えたのは、1980年に勃発したイラン・イラク戦争においてソ連製戦車を中心とするイラク軍のT-72がチーフテンなどを装備するイラン軍と交戦したのが最初である(デズフールの戦い)。しかし、具体的戦果がはっきりとわかっていないため、あまり注目はされていない。


T-72の戦闘が初めて世界の注目を集めたのは、1982年にイスラエルがレバノンへ侵攻した(イスラエル作戦名「ガリラヤの平和」)際にシリアのT-72がメルカバ Mk.1と交戦した時である。シリア第3機甲師団の装備するT-72は、ベッカー盆地南部で6月10日頃、従来型のAPDS弾を搭載したショット(イスラエル軍仕様センチュリオン)戦車一個大隊を攻撃し、これに損害を与え撤退させた。これに対しイスラエル軍のベンガル少将は翌日、第7機甲旅団の新鋭戦車メルカバを派遣。当時のメルカバ Mk.1の主砲は一世代前とされるL7 105 mm戦車砲であったが、イスラエルが独自に開発した完全タングステン合金弾芯のAPFSDSの性能やイスラエル軍とシリア軍の戦車兵の錬度の差、シリアのT-72が低性能のモンキーモデルであったことなどが原因でT-72はメルカバに遠距離からほぼ一方的に撃破された。



主な戦歴



  • カンボジア・ベトナム戦争 (1977年-1989年)


ベトナム軍が使用。


  • アンゴラ内戦(1980-1988年)


アンゴラ軍とキューバ軍が使用。


  • イラン・イラク戦争(1980-1988年)


イラク軍が使用。


  • レバノン内戦(1982年)


シリア軍が使用。


  • ソ連のアフガニスタン侵攻(1979-1989年)


ソ連軍が使用。


  • 湾岸戦争(1990-1991年)

イラク軍が使用。主に共和国防衛隊で運用された。



  • ユーゴスラビア紛争(1991-1994年)


  • 第一次チェチェン紛争(1994-1996年)



ロシア軍が使用。チェチェン・イチケリア共和国軍も鹵獲した物を運用。


  • ユーゴスラビア・コソボ戦争(1998-1999年)

ユーゴスラビア軍が使用。


  • 第二次チェチェン紛争(1999-現在)

ロシア軍が使用。チェチェン・イチケリア共和国軍も鹵獲した物を運用。


  • イラク戦争(2003-2011年)

イラク軍が使用。主に共和国防衛隊で運用された。


  • 南オセチア紛争(2008年)

ロシア軍、グルジア軍双方が使用。


  • リビア内戦(2011年)

カダフィ派、反カダフィ派双方が使用。


  • シリア内戦(2011年-)

シリア軍が使用、自由シリア軍やイスラム国(IS)等の反政府勢力も政府軍や他の武装勢力が政府軍から鹵獲した物を更に鹵獲し運用。


  • ウクライナ騒乱以降の内戦(2014年-)

親ロシア派の武装組織が使用。ロシア軍の新鋭モデルT-72BMが使用されているが、ロシアはウクライナへの派兵を否定している[4]


湾岸・イラク戦争において





イラク戦争後に編成された、イラク治安部隊のイラク陸軍で使用されるT-72M(2006年)


1991年と2003年、二度にわたりT-72は西側の第3世代戦車である、M1エイブラムス、チャレンジャー1・2と激突した。アメリカ軍を中心とした多国籍軍の戦車は、貫通力の高い劣化ウラン弾を採用した強力な砲弾と、同じく劣化ウランを織り込んだ防御力の高い装甲、夜間でも確実に標的を捕らえる事のできる射撃管制装置など最先端の装備で臨み、圧倒的な制空権のもとでエアランド・バトル戦を展開したのに比べ、イラク軍はT-72MやT-72M1といった輸出向けにスペックダウンされたモンキーモデルで対抗しなければならなかった。


本来、複合装甲が施されている部分に普通の圧延鋼板溶接装甲が使用されていたり(一部だけのT-72M1が複合装甲を使用した)、徹甲弾もタングステン芯ではなく、鋼鉄のものが使用されたと言われている。このため、M1エイブラムスの砲塔に直撃弾を与えたにもかかわらず、全くダメージを与える事ができなかったケースもあった。


イラクが行った改良はレーザー検知器を加えた程度であったため、多国籍軍側戦車との性能差は明らかであり、T-72は一方的に撃破された。しかも、T-72は砲塔下部に砲弾を収納する設計になっていたため、貫通した砲弾によりたやすく誘爆を招き、搭乗員全ての命を奪う事となった。直撃を受けた砲塔が箱の蓋を開けた様に横倒しになったり、上空に吹き飛ぶ様子を見たアメリカ軍兵達はT-72を「ジャック・イン・ザ・ボックス(びっくり箱)」と呼んでいた。


湾岸戦争における73イースティングの戦いなど、最新の電子装備が搭載されたM1A1HAに一方的に撃破される映像が世界中に流された事もあり、T-72の兵器としての商品価値は一気に下落した。T-72の全面改修タイプであるT-90は、この失墜したロシア製兵器のブランドイメージ回復を目的に開発されたと言われ、また、輸出に際してもモンキーモデルにせず、本国と同等の仕様にしているとも言われる。



型式



T-72 ウラール

初期タイプ。ステレオ式測遠機を装備。

T-72A

サイドスカート装備・追加装甲・レーザー測遠機・射撃管制装置・夜間暗視装置・発煙弾発射機を装備。




T-72B



T-72B

装甲の強化・前面部に追加複合装甲・レーザー誘導型対戦車ミサイル発射機能を搭載。複合装甲による砲塔前面部の独特の「膨らみ」から、西側ではグラマーで有名な女性歌手ドリー・パートンの愛称で呼ばれた。





T-72AV・T-72BV


爆発反応装甲を追加したT-72AおよびT-72B。1985年から生産された。

当初227基のコンタークト1を装備、のち新型のコンタークト5に換装。

T-72B1

T-72Bからレーザー誘導型対戦車ミサイル発射機能を排除。

T-72BK

T-72Bの指揮官用車両。偵察機能、指揮系通信機・通信アンテナの増設。

T-72B(M)

T-72Bの強化型。改修版の爆発反応装甲・砲塔部に複合装甲を搭載。1988年から生産された。コンタークト5を装備。T-72BMとも書かれる。




T-72S

輸出向けの派生型。155基のコンタークト1を装備。




T-72M



T-72M

ソ連、ポーランドとチェコスロバキアで生産された輸出モデル。T-72Aのモンキーモデル。

T-72M1

ソ連、ポーランドとチェコスロバキアで生産された輸出モデル。装甲を厚くしたモデル。





T-72B2 ロガートカ


2006年に初公開されたロシア連邦軍のT-72新型改修モデル。愛称は「投石器」のこと。

第三世代の爆発反応装甲レリークト(ロシア語版)、1,000馬力のV-92エンジン、新型射撃管制装置ソスナー、赤外線型夜間射撃暗視装置などを装備する。T-72B或いはT-72BMとも呼ばれた。




T-72B3



T-72B3


2013年にロシア軍が調達を開始したT-72シリーズの最新の改修モデル。

T-72をT-90に近づけたもので、新型の射撃管制装置、T-90Aと同じ主砲2A46M-5及びV-92S2エンジン(1000馬力)、APU(補助動力装置)、T-72シリーズでは初めてのダブルピン式のキャタピラを装備し、一部の車両には砲塔上に車長用サイトを装備したものも確認されている(車長用サイトを装備した車両は資料によってはT-72B3M或いはT-72B4と表記されているが、ロシア軍では車長用サイトの有無に関わらずT-72B3の呼称で統一されている)が、改修は段階的な様でコンタークト5や新型砲手用観測装置を搭載し外観は変わらいものの、既存のT-72BのV-84エンジン(840馬力)を変更せず引き続き搭載している車両も存在している。また、2016年以降は砲塔や車体の後部にケージ装甲を導入し、デザインをより市街地戦や対ゲリラ戦向けに変更した車両も見られる。

T-72B4

T-72B3に全周旋回式車長用サイトを装備しハンターキラー能力を獲得したモデル。T-90MSと同じV-92S2F(1130馬力)エンジンを搭載し、併せてT-90MS同様にハンドル式の操縦装置とオートマチック・トランスミッションの変速装置が採用されているとされる。T-72B3改修強化型、T-72B3M等の名称で呼ばれる事もある。



派生型




TOS-1 ブラチーノ

T-72の車体に30連装サーモバリック爆薬弾頭ロケット弾発射機を搭載した、自走式多連装ロケットランチャー。

BMP-T

T-72の車体に30mm連装機関砲および9M133 ATGMを装備した新設計の砲塔を搭載した戦闘車両。BMP-Tとは「戦車支援戦闘車」の意味で、戦車を歩兵の近接対戦車攻撃から援護するための車両。

MTU-72

T-72ベースの架橋戦車。




T-72M4CZ



T-72M3CZ/T-72M4CZ(チェコ語版)


ビロード離婚により戦車製造工場を失ったチェコが、第025軍修理工場(VOP025)を中心に開発した近代化改修型。


射撃管制装置に伊ガリレオ社製TURMS-Tを装備し、環境センサーやNBA-97 GPS航法装置、DITA-97自己診断装置を追加装備したほか、砲管制装置と弾道コンピュータを一体化。主砲の操作はジョイスティック式になり、主砲の2A46には砲口照合装置を追加して、シンセシア社製APFSDS-T弾を発射可能。砲塔には、ポーランド製のダイナ爆発反応装甲を装着し、POC SSCiレーザー警報装置と独製キッデ・ドイグラ自動消火装置を装備。さらに、磁器反応式の対戦車地雷を無力化するというメトラ・ブランコスSPシステムを車体に装備する。車体全体には、赤外線映像へのカモフラージュになるというエナメルU2500が塗布されている。

M3とM4の違いはエンジンで、M3にはオリジナルのV-46にターボ圧縮機を追加した858馬力のV-46TCエンジン、M4には1,000馬力の英パーキンス社製CV-12エンジンと米アリソン社製XTG-411-6全自動トランスミッションが装備され、パワーパック化されている。チェコ陸軍が250両のT-72M1からの改修を発注している。

PSP T-72MP

チェコのPSPボヘミアAS社がフランスのSAGEM、ウクライナのハリコフ・モロゾフ機械設計局、マリシェフ工場と共に提案した近代化改修型。

車体前部と砲塔に爆発反応装甲を装着し、APSであるシュトーラ1、SEGAM SAVEN 15MPデジタル射撃管制装置を装備。射撃サイトにも仏製のレーザー測距機・パッシブ暗視装置付きのタイプに換装。主砲は改良型の2A46M-1に換装され、サーマルスリーブと砲口照合装置を標準装備する。エンジンは、1,000馬力の6TD-1または1,200馬力の6TD-2に換装。

T-72M1 モデルナ


スロバキアのZTSテース・マルチン社による近代化改修型。

車体前部と砲塔に爆発反応装甲を装着し、射撃管制装置を電子化。さらに射撃サイトを換装した上にエリコン・コントラバス製KAA-001 20mm機関砲を砲塔左右に1丁ずつ装備。





T-72M1-A

T-72M1 モデルナの改良型。

射撃管制装置を国産のEFCS-72Aコンピューターに換装し、車長サイトをSGS-72Aスタビライズ・パッシブサイトに換装。レーザー警報装置を追加装備。エンジンは850馬力のS12Uに換装し、トランスミッションも改良されている。その代わり、対空機関砲は撤去されている。

T-72M2 モデルナ2

T-72M1 モデルナの改良型。

射撃管制装置と射撃サイト、弾道コンピューター、CRTディスプレイをリンク化。さらに、2A42 30mm機関砲を砲塔右側に独立して装備。




ズザナT-72M1

スロバキアのズザナ社製の自走砲。T-72M1の車体にズザナ 155mm自走榴弾砲の砲塔を搭載。インド軍に提案されたが不採用となった。その後、スロバキア陸軍、キプロス陸軍が採用している。

M-84


ユーゴスラビアでライセンス生産された型で、約500輌生産。

輸出型はクウェート軍に200輌配備され、イラク戦争後の新生イラク軍でも使われている。





M-84A1

ユーゴスラビアで生産。射撃管制装置の強化。エンジンを1,000馬力に強化。




M-84A4 スナイペル


クロアチアで生産。コンピュータ類を強化。

M-92 ヴィホル

クロアチアで生産。

M-95 デグマン

クロアチアで生産。M-84Aをベースにした発展型。

改修版の爆発反応装甲・レーザー誘導型対戦車ミサイル発射機能など。

M-95 コブラ

クロアチアで生産。M-84A4をベースにした発展型。

M-84AS(M-2001)


セルビア・モンテネグロで開発。T-90に準じる仕様。





イラク戦争時に放棄されたT-72G



Lion of Babylon(「バビロンのライオン」の意)

T-72のイラクモデル。


1988年のバグダッドの兵器ショーで、国産型と称して展示発表された。実際は半完成品の輸入部品をくみ上げた、T-72Gのノックダウン生産品であった。




PT-91



PT-91 トファルディ


ポーランド製のT-72M1の改修型。

自国オリジナルの射撃管制装置・爆発反応装甲・パッシブ型夜間映像装置を装備。主にアップグレード・キットとして提供しており、ポーランド陸軍とマレーシア陸軍が採用した。

T-72MIZ

ポーランドが自国製のT-72M1に南アフリカのデネル社製タイガー射撃管制装置、爆発反応装甲、レーザー警報装置を装備し、エンジンをS12Uに換装するなど、PT-91に準じた改修がされている。

PT-16

ポーランドがT-72M1のシャーシをベースに、主砲をNATO規格のAPFSDS-T弾を使用できる国産の120mm滑腔砲を装備した改修型。

TC-90

ポーランド製の戦車橋で、最大19mの間隔に20mのシザース式戦車橋を架けることが可能。

WTZ-3

ポーランド製の装甲回収車。

車体上にTD-50 15tクレーンやドーザー・ブレード、ウインチなどを装備。ポーランド陸軍のほか、インド陸軍が採用している。

MID

WTZ-3を基にした装甲工兵車両。試作車3両のみが製造された。

TR-125


ルーマニア版T-72。エンジンやサスペンションを改良。プロトタイプが数両のみが製造された。

T-72AM

ウクライナで配備されたT-72Aの改修型。

T-72BMに準じた規格であるが、装備品の一部をウクライナ製のものに換装している。コンタークト5と自動制御式の射撃管制装置が特徴となっている。

T-72MP

ウクライナのKMDB社のT-72の近代改修キット。


T-80UDやT-84の技術をベースにT-72をアップグレード。エンジン出力強化、射撃管制装置の改修・装甲の強化。チェコとの共同開発で、フランスの会社の技術も織り込まれる。

T-72AG

ウクライナのKMDB社のT-72の近代改修キット。

主砲の有効射程が延長されている他、対戦車ミサイルの運用が可能。砲手用サイトをスタビライズを強化した1G46に換装し、暗視装置を強化。車長用サイトにはオーバーライド機能を追加した。射撃管制装置は1V528自動入力式弾道コンピューターに換装。装甲はT-84と同等の爆発反応装甲とゴム板が追加され、エンジンはT-84と同じ6TD-12に強化。

T-72-120

ウクライナのKMDB社のT-72の近代改修キットで、同社の開発したヤタハーンに準じた性能を保証している。


NATO規格の120mm滑腔砲対応の主砲、および自動装填装置を装備。120mm砲対応の対戦車ミサイルも発射可能。

アジェヤMK-1




アジェヤMK-1




インド版T-72。1993年にT-72M1と同性能に改修。

アジェヤMK-2

インド版T-72M1。


GPS機能、爆発反応装甲・レーザー警報機能・射撃管制機能の強化・赤外線型夜間暗視装置・ポーランド製1,000馬力エンジンを搭載。

TANK-X

インド製。T-72の車体に自国開発のアージュン戦車の砲塔を搭載。プロトタイプのみ。

T-90

T-72の車体とT-80の砲塔を組み合わせた、湾岸戦争で失墜したT-72の名誉挽回を目指した型。


1993年より生産に入り、T-80より低コストのため、ロシア軍でも多数導入されている。

BMT-72(ウクライナ語版)

ウクライナのKMDB社で開発された歩兵戦闘車型。姉妹型車輌にBTMP-84がある。



使用国




T-72使用国(青は現役、赤は退役)


T-72の派生型及び運用国(英語版)




  • アルジェリアの旗 アルジェリア


  • アンゴラの旗 アンゴラ


  • アルメニアの旗 アルメニア


  • アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン


  •  ベラルーシ


  •  ブルガリア


  • クロアチアの旗 クロアチア


  •  チェコ


  •  コンゴ民主共和国


  • エチオピアの旗 エチオピア


  • ジョージア (国)の旗 ジョージア


  • ギニアの旗 ギニア


  •  ハンガリー


  • インドの旗 インド


  • イランの旗 イラン


  • イラクの旗 イラク


  •  カザフスタン


  • キルギスの旗 キルギス


  •  リビア


  • マケドニア共和国の旗 マケドニア


  • マレーシアの旗 マレーシア


  • ミャンマーの旗 ミャンマー


  • モロッコの旗 モロッコ


  • モンゴルの旗 モンゴル


  • モザンビークの旗 モザンビーク


  • ナイジェリアの旗 ナイジェリア


  • ポーランドの旗 ポーランド


  • 南スーダンの旗 南スーダン


  • シエラレオネの旗 シエラレオネ


  • ロシアの旗 ロシア


  • セルビアの旗 セルビア


  • スロバキアの旗 スロバキア


  • シリアの旗 シリア


  • タジキスタンの旗 タジキスタン


  • チャドの旗 チャド


  • トルクメニスタンの旗 トルクメニスタン


  •  ウクライナ


  •  ウズベキスタン


  • イエメンの旗 イエメン


  •  キューバ


  • ベネズエラの旗 ベネズエラ


  •  ケニア



2008年9月、ウクライナからケニア軍向けに海上輸送中の33輌のT-72は、ケニア沖でソマリアの海賊にベリーズ船籍の貨物船ファイナ(さらにファイナに積載されていた大量の兵器)もろとも強奪され、ニュースになった(多額の身代金により解放)[5][6]

現在使用していない国


  •  フィンランド


レオパルト2A4に交換され、退役。


  • 東ドイツの旗 東ドイツ


東西統一後、レオパルト2が主力になり、現在は使用されていない。


  • ユーゴスラビアの旗 ユーゴスラビア

50輌のT-72を旧ソ連から購入したが、これは独自改良を加え国産化したM-84シリーズ生産前の訓練用であった


  •  ルーマニア

T-72Mを50両購入しており、それをベースにTR-125を開発していたが計画が中止となり、採用はしていない。後に海外に売却された。


  • アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

研究のため購入。


登場作品



映画



『FUTURE WAR 198X年』

ワルシャワ条約機構軍の戦車として登場。大挙して東西ドイツ国境を突破し、NATO軍の反撃に構わず西進するが、錯乱したマイケルの放った戦術核で全滅する。

操縦席のシーンでは、運転窓がペリスコープではなく単なるガラス窓となっている。

『アヴァロン』

映画の冒頭、仮想空間の戦場に登場する戦闘車両として、ZSU-23-4と共に登場。

ZSU-23-4と共にロケ地のポーランド陸軍の協力により、実車が登場している。

『エクスペンダブルズ2』

犯罪武装集団「サング」の戦車として登場。レーザー測定器を装備したタイプ(T-72M1)。

『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』

架空の国家「アズメニスタン」の軍の戦車として登場。ステレオ式測遠機を装備した初期型タイプおよびレーザー測定器を装備したタイプが多数登場する。





『エネミー・ライン』


セルビア人武装勢力の戦車として登場。ステレオ式測遠機を装備した初期型タイプと、レーザー測定器を装備したタイプ(T-72M1)が確認できる。

『山猫は眠らない2 狙撃手の掟』

セルビア人武装勢力の戦車として登場。

『ロード・オブ・ウォー』


兵器見本市のシーンや、ニコラス・ケイジ演じる主人公がウクライナ軍の装備を横流し同然に調達して売却するシーンに登場。

登場するものはウクライナ軍が実際に装備していた車両で、作中に保管場所として登場する軍の施設も、全て本物のウクライナ軍の駐屯地である。

『ハードコア (2015年の映画)』

エイカンの傭兵部隊の戦車として登場。

『ランボー3/怒りのアフガン』

中盤のソ連軍基地潜入シーンに一瞬だけ写っている。この際に写っている車両は後述のシーンに登場するレプリカ車両である[7]

終盤の砂漠での戦闘シーンに使用されたものは、M8トラクターを大規模に改造したものである。このクライマックスシーンはアメリカで撮影されており、T-72やその他のソビエト軍車両やヘリコプターも同様に西側の兵器を改造したレプリカである。

『サンダーブラスト 地上最強の戦車』

反米ゲリラ軍の戦車として登場。

『スリー・キングス』


イラク軍の戦車として登場。

『対決』


ワルシャワ条約機構軍所属のソビエト軍車両として登場。

『若き勇者たち』

ソビエトのアメリカ侵攻軍の車両として登場。


上記4作に登場するものも『ランボー3』に登場したものと同じレプリカ車両である。このレプリカ車両はT-72の特徴をよく捉えているが、砲塔が実物に比べて小さく、形状が平たくないことや、履帯の形状、砲塔前面周囲に装着されている発煙弾発射筒の形と位置で見分けることができる。なお、このレプリカ車両は2000年代になっても現存しており、『メギド』や『レッド・ドーン』といった作品に登場している。



ゲーム



『Operation Flashpoint: Cold War Crisis』


ソ連軍陣営で使用可能な戦車として登場する。レジスタンス陣営でも鹵獲した車両を使用可能。

『コール オブ デューティシリーズ』



『CoD4』


ロシア超国家主義派の主力戦車として登場する。ほとんどが迷彩を施されない状態で登場するが、一部のミッションで登場するものは迷彩が施されている。

『CoD:MW2』


ロシア軍が投下した戦車として、ワシントンD.C.の郊外に数両登場する。

『CoD:MW3』

ロシア軍の戦車として、T-90とともにヨーロッパ各地で登場する。

『CoD:BO2』

マルチプレイの一部マップにオブジェクトとして配置されている。





『大戦略シリーズ』

『バトルフィールドシリーズ』



『BFV』


北ベトナム軍の戦車として登場する[8]

『BF3』

キャンペーンにのみPLRの戦車として登場し、ミラー軍曹の戦車隊と交戦する。





『メタルギアシリーズ』



『MGSPW』

ボス敵として、T-72AとT-72Uが登場する。T-72Aには、サイドスカートや爆発反応装甲の増設が行われるなどの重装備となっている。

『MGSV』

「T77 Nosorog」という名前で登場。フルトン回収で鹵獲すれば自軍戦力として使用可能。





書籍



『中国完全包囲作戦』(文庫名:『中国軍壊滅大作戦』)


統一朝鮮陸軍のK1およびK1A1と交戦する。



脚注




  1. ^ オブイェークトは物、物体の意味で、英語のオブジェクトに相当する


  2. ^ Zaloga & Sarson, T-72... p.22


  3. ^ なお、日本の文献ではT-64より採用されたソビエト/ロシア戦車の自動装填装置は"コルジナ"および"カセトカ"の名称で記述されていることがあるが、これらはどれも砲弾の収納方式や装填方式からつけられた通称であり、そのような制式名称の自動装填装置が存在しているわけではない。「コルジナ(корзина)」は"籠"、「カセトカ(кассетка)は"小箱のようなもの" "個別に分けられたもの"を意味する(カセータ(кассета)の縮小辞形)ロシア語で、それぞれ「弾薬を砲塔バスケットに搭載する」「装薬カートリッジを個別に装填する」ことから生まれた通称と見られる


  4. ^ “「ウクライナで露軍戦車を見分ける方法」英大使館がツイッター投稿”. AFPBBNews (フランス通信社). (2014年11月20日). http://www.afpbb.com/articles/-/3032276 2014年11月20日閲覧。 


  5. ^ Somali pirates 'seize 30 tanks' BBC News 2008年9月26日


  6. ^ BBC NEWSSomali pirates 'free arms ship' 2009年2月5日


  7. ^ このシーンは基本的にはイスラエルでロケが行われ、イスラエル国防軍が協力しているが、編集によりイスラエルロケ以外の撮影フィルムも使われているため、カットにより登場車両が異なっている。なお、基地に潜入する際にジョン・ランボーが下に掴まり隠れる車両は本物のソビエト製戦車であるが、これは、イスラエル軍が鹵獲したT-55を基に独自改修したTiran-5で、砲塔右側面と砲塔後部、車体後端に雑具箱が存在し、転輪の配置と砲塔のベンチレーターが無いことから、T-55改Tiran-5であることがわかる


  8. ^ 実際の北ベトナム軍はベトナム戦争時に本車を配備した経歴はない。





関連項目



  • 戦車一覧


  • 戦車バイアスロン:第1回大会の使用車両となった。



外部リンク






  • Vasiliy Fofanov's Modern Russian Armour Page—T-72B(M)





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