行先標
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行先標(いきさきひょう)は、鉄道の列車やバスに掲出される行き先などを示した板。行先票と表記されることもあり[1]、方向板、系統板、行先板、行先標示板ともいう。幕式のものについては方向幕の項を参照されたし。列車の前面に掲示され、列車種別ならびに行先を表示する板を特に運行標識板と称することもある。列車愛称のみを掲示するものについては、同じく方向幕#ヘッドマークを参照のこと。
目次
1 概要
1.1 鉄道車両
1.1.1 日本
1.1.2 韓国
1.1.3 スイス
1.2 バス
2 号車札・種別札・愛称札
3 脚注
4 関連項目
概要
列車やバスなどの行き先を示すため、車体前面や側面に掲出される。
鉄道車両
日本
日本国有鉄道(以下国鉄)では「列車行先札」の電報略号を「サボ」としていた[2]。これは、「サインボード」の略称といわれる。その他にも、中・長距離列車が機関車牽引の客車列車を中心とした時代、行き先は車体側面に表示されるのが一般的だったため、それを意味する「サイドボード」や「サービスボード」の略であるという説もある。
行先標の設置方式(「サボ受け」の形状)には差込式、落し込み式、吊り下げ式の3種類があり、また、サボ受けの設置場所も車両により様々である。
国鉄車両では、電車は側扉横上部の差込式、一般形気動車は車体中央窓下の落し込み式、特急・急行形気動車は側扉横上部の差込式、10系客車以前のいわゆる旧形客車は車体中央窓下の吊り下げ式が標準となっている。
また、大都市近郊の電車列車は、前後面にのみ掲示する例(ヘッドボード)が多かった。東京圏が落とし込み式(サボ受け)、大阪圏が吊り下げ式(サボ掛け)で、それぞれ前面窓下中央に掲示していた。
私鉄の一部では、上下あるいは左右が半分ずつ分かれたものが束ねてあり、本のようにめくって切り替えられるようになった物も見られた(めくり式)。方向幕を装備した車両が一般的になると、方向幕非装備の車両では助士席窓内側に行先標を吊り下げる例も多く見られるようになった。
1950年代末以降に登場した特急形や急行形の電車、気動車では、出入り口(客扉)脇の高い位置に横から指し込む方式のものが採用された。これらは自動ドアを装備していたことから、車掌スイッチで両側のドアを一斉開放するだけですぐに交換作業が行え、作業員は窓を開け閉めする手間から解放され[3]、固定式で窓の開かない車両にも対応できた。急行形の一部には車体中央窓下に落し込み式を取り付けたものもあった。
材質は琺瑯引きの鉄板が多かったが、耐久性に優れている反面で重く取り扱いが大変である(5両分10枚ともなると、両手でないと持てないほど重い)ことと、琺瑯の剥げや腐食などの問題があったため、後にプラスチック製のものが主流となった。
行先標は交換に時間や人手がかかる他、以下のような問題がある。
- 夜間は見えにくい
- 1両で2枚必要であるため自ずと大量になり、折り返し駅や始発駅などでは専用の保管場所が必要
ダイヤ改正などで列車の行先パターンが変わった場合に修正に多大な手間と時間と資源を使う- 車両運用以上に行先標の運用が複雑になる
- 一部の収集家や転売者・転売屋など、心無い者による盗難
このため、ビニール幕やLED(発光ダイオード)などの装置に置き変わりつつある[4]。
国鉄時代の飯田線・豊橋駅では発車時刻入りの行先標を列車最後部妻面に取り付け、発車標代わりとして使われていた。妻面の行先標は発車直前に取り外され、運行は側部の行先標のみで行なわれた。
西日本旅客鉄道(JR西日本)岡山支社では1998年(平成10年)に行先標を廃止したが、廃止直前のサボは交換回数を減らすため、可部線(広島支社、廃止区間)の写真のように複数の駅名と矢印を表示したものが使用されていた。また、岡山支社では赤穂線を経由する列車には駅名や矢印を赤色にする独自の表記が用いられた。
- 例1:岡山→三原→糸崎 この表記法は九州旅客鉄道(JR九州)でも見られた。
- 例2:岡山→(赤穂線)播州赤穂→相生→姫路
行先標廃止後も115系電車やキハ40・47形気動車が側面行先表示器を装備せず、当時岡山駅の在来線ホームには宇野・瀬戸大橋線列車が発着する11 - 13番のりばを除いて発車案内表示器が設置されていなかったため、利用者が戸惑う場面が見られた。地元マスメディアから「毎日がミステリー列車」と揶揄されたことから、同支社は急遽115系にLED式行先表示器を装備する事態となった[要出典]。
韓国
韓国鉄道公社 (KORAIL) 在来線では、2000年代以降も行先標が主流となっている。韓国では、日本のような種別はなく、列車名によって区別されているため、行先標には「列車名|出発駅→到着駅」のように記載されており、裏面は出発駅と到着駅が逆となっている。なお、行き先には英語とともに漢字でも表記される(ただし、新しい行先標では漢字は省略されている場合もある)。
スイス
ベルニナ特急の行先標は出発駅(クール)・中間駅(ポントレジーナ)・到着駅(ティラーノ)の表示で「Chur - Pontresina - Tirano」と表記されている[5]。
バス
バスにおいては、日本では幕式が主流となっているが、台湾など海外などでは行先標式が多い。近年ではLED式のバスが増えている。
号車札・種別札・愛称札
車両の番号を示す表示として号車札(ごうしゃふだ)、列車種別・列車愛称を示すものに種別札(しゅべつふだ)・愛称札(あいしょうふだ)がある。
号車札は増解結を行う多層建て列車には必要なものでもあった。
東海道新幹線開業時には、行先標に愛称・列車番号を記載したものがあったが、高速運転時の脱落や入替作業に手間がかかるため、早い時期に廃止されている[6]。さらに、0系車両では使われた号車札も、200系車両・100系車両以降ではシールによる標記に変わっている。また、東日本旅客鉄道(JR東日本)のE1系車両以降の新幹線車両ではおもにLEDによる標記がなされている。
近年では、種別札・愛称札が方向幕で代替されている事例もみられる。JR東日本のE653系車両のように、行き先や号車札も合わせてLEDによる表示に統合されたものもある。
種別札については、1980年代より、主に485系・489系電車や183系・189系電車などで設置場所に「特急LTD. EXP.」のステッカー標記がなされ代替された事例がある。
愛称札はヘッドマークと同様に列車愛称を記載するが、一般的にヘッドマークより小さく、模造または実使用品と同じものを記念として頒布する事例もある。
脚注
^ “東京駅から被災地へ つなげる・つながる・支援のこころ 震災復興支援イベントを東京駅で開催します (PDF)” (2011年8月12日). 2015年11月30日閲覧。
^ 正しい「電略」。(上) 鉄道ホビダス「編集長敬白」2010年01月13日版(ネコ・パブリッシング)
^ 車掌スイッチを操作せず、室内外のドアコックを用いる場合もある。20系客車は自動ドアを装備していないため、室内側で号車・列車名・行先札を交換し、車体に空けられた小窓を通して表示する方式を採った。照明は後の方向幕のような透過光式では無く、行先標専用の蛍光灯による反射光(直接照射)式であった。
^ ただし、四日市あすなろう鉄道260系電車の改造後の前面など、方向幕の使用をやめて行先標に戻した例も僅かに存在する。また、1970年頃の山陽電気鉄道や神戸電鉄(当時の社名は神戸電気鉄道)のように、旧型車を含む全ての旅客用車両にほぼ一斉に前面方向幕装置を取り付け、行先標の使用を短期間で廃止した事業者もある。
^ 『るるぶスイス』JTB、2012年、45頁
^ 愛称と列車番号を表示する方式は、後にN700系でフルカラーLED表示器を用いて復活し、これ以降の新幹線車両では標準の表示形式となった。
関連項目
- 方向幕
- 車内案内表示装置
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