将棋ソフト不正使用疑惑








将棋ソフト不正使用疑惑(しょうぎソフトふせいしようぎわく)では、2016年に将棋界で発生した棋士によるソフト不正使用の疑惑事件について記述する。


三浦弘行九段(第29期竜王戦挑戦者)が、将棋ソフトを使用して対局中にカンニングを行ったのではないかと疑われ、三浦が休場の意向を示したにも関わらず、期限までに休場届を出さなかったことを理由に、直前に迫っていた竜王戦を含む12月31日までの公式戦出場停止となったが[1]、後の第三者委員会の判断では、不正行為に及んでいたと認めるに足りる証拠はないと結論付けられた。


結果として、日本将棋連盟の谷川浩司会長、島朗常務理事(いずれも当時)の2名が辞任。さらにその後、臨時総会で青野照市、中川大輔、片上大輔の解任が可決されるなど、将棋界全体を揺るがす問題となった。


2017年2月6日、新たに連盟会長に就任した佐藤康光が、将棋界の信用回復と三浦九段の名誉回復に取り組むとし、同年5月24日に連盟と三浦との間で和解が成立したことが公表されたことで一応の決着を見たものの[2]、再発防止策としての対局規定見直しなど、依然として多くの課題が残されている。




目次






  • 1 経緯


    • 1.1 不正指摘前の状況


    • 1.2 ソフト不正使用の指摘


    • 1.3 10月10日の会合での渡辺竜王の言動


    • 1.4 出場停止処分


    • 1.5 三浦側の反論


    • 1.6 羽生三冠の発言


    • 1.7 第三者委員会による調査


    • 1.8 谷川会長の辞任


    • 1.9 理事3名の解任


    • 1.10 和解の成立


    • 1.11 再発防止策


    • 1.12 朝日と読売の盤外戦


    • 1.13 第76期順位戦




  • 2 将棋界以外の反応


    • 2.1 囲碁




  • 3 脚注


    • 3.1 注釈


    • 3.2 出典




  • 4 参考文献


  • 5 外部リンク





経緯



不正指摘前の状況


2016年8月15日、8月26日、9月8日の第29期竜王戦挑戦者決定三番勝負にて三浦弘行は、丸山忠久九段に2勝1敗で勝ち、渡辺明竜王(竜王・棋王)への挑戦権を獲得した。



ソフト不正使用の指摘


2016年夏以降、複数の棋士から三浦に対局中の離席が目立つという指摘があったほか、10月に入って橋本崇載八段が自身のTwitterにおいて名指しを避けつつも「将棋ソフトを使ったカンニング行為を行う棋士がいる」との発言をしたこともあった[注 1]。後の第三者委員会の調査によると、最初に三浦を疑ったのは久保利明で、久保は7月26日の竜王戦本戦決勝トーナメントの対局において、三浦が夕食休憩後という終盤、三浦の手番で31分間も継続して離席したほか、多数の離席が見られたことから強い不信感を抱いた[3][注 2][注 3]。久保は7月29日、谷川浩司日本将棋連盟会長も出席した関西月例報告会で、三浦への疑惑を念頭に、ソフト指しを防ぐための電子機器の規制が必要と主張した。日本将棋連盟はこれを受け、8月4日の常務会で「対局時における電子機器の取り扱いについて」と題する通知書を全ての所属棋士・女流棋士に送付した。内容は「長時間の離席はマナー違反であり、電子機器等の不正使用を疑われかねない行為であるので控えるように」というものであった。


この通達後の竜王戦挑戦者決定三番勝負の丸山戦の第2局、3局においての対局では将棋連盟常務理事の青野照市、佐藤秀司、中川大輔、島朗、理事の杉浦伸洋が夕食休憩後の三浦の行動を監視したが、離席は多かったものの不審な行動は確認できなかった[注 4]



10月10日の会合での渡辺竜王の言動


渡辺明竜王も、三浦の不正を疑っており、10月3日のA級順位戦で三浦に敗戦後、ある観戦記者[注 5]や将棋ソフトに精通している棋士の千田翔太との意見交換、三浦の離席回数の多さ、将棋ソフト「技巧」による検証、そして久保戦の結果を見聞した結果、三浦への「疑惑が確信に近づいた」[3]。そこで渡辺は、10月10日に島常務理事の自宅で谷川会長、佐藤天彦名人、羽生善治三冠、佐藤康光棋士会長、千田と協議し、久保も電話で意見を述べた。参加した棋士の中には、上記のとおり、渡辺棋士と千田棋士がそこまでいうのであれば三浦棋士が不正をしたのではないかという疑念を示す意見や、その場で初めて聞いた話でもあり疑わしいものの結論は出せないという意見の他、疑念を払拭するために三浦棋士本人から話を聞くべきではないかという意見等もあった。同時に、疑惑を否定するものもおらず、連盟としてはその事実を重く受け止めざるを得ない状況であった。島常務理事は、会合の後、三浦と電話で話し、三浦にソフト指しの疑惑がかかっていることと、翌日午後1時からの常務会に参加するように伝えた。席上で渡辺は、「不正を行った三浦九段と対局するつもりはない。常務会で判断してほしい。」と主張した[6]。また、渡辺は『週刊文春』の取材に対し三浦を疑った根拠として、「感想戦で三浦さんが話した読み筋が、そのままソフトの読み筋だった」「ソフトとの指し手の一致率が90%だとカンニングしているとか、そういう事ではありません。僕や羽生さんの指し手(の一致率)が90%ということだってありますから。一方で、一致率が40%でも急所のところでカンニングすれば勝てる。一致率や離席のタイミングなどを見れば、プロなら(カンニングは)分かるんです。」と述べた[7][注 6]



出場停止処分


翌10月11日、日本将棋連盟はスマートフォンなどによる不正の疑いがあるとして、常務会において三浦に説明を求めた。この常務会において三浦は、「離席については体調が芳しくなかった」こと等の理由を説明し、また、「自らが指した手が技巧が示す指し手と一致していたとしても、自らが指した手はプロ棋士なら自力で考えることができる手であり、一致率 等はソフト指しの不正を行った根拠にはならない」旨の説明をし疑惑を否定し、実際には存在しない久保戦の30分間の離席について問われ「体調が悪かったので守衛室で休んでいた」と答えた。通常棋士が対局中に守衛室に行くことは稀であるためこの説明がかえって理事らの疑惑を招くことになったが、後の第三者委員会では、実際には存在しなかった30分の離席について問われ三浦が勘違いしたものと考えるのが合理的だとされている。多数による追求的な雰囲気の中、三浦は「このような状況では対局できない」と調査を前提とした休場の意向を表明。[注 7]。その後三浦は自らPCおよび、スマートフォンのアプリを撮影した画像を自主的に提出。休場届の提出可否については、翌日の2016 年10月12日に三浦棋士代理人と直接会って話し合った後に決めたい旨を伝えた。その後三浦は、休場届を提出しない意向を連盟側に通達したが、期限とした翌12日15時までに休場届が提出されなかったという理由により12月31日までの公式戦出場停止処分にされた[8][9][10]。この出場停止処分により、第29期竜王戦七番勝負に出場できなくなっただけでなく、第58期王位戦の予選において不戦敗となり、第10回朝日杯将棋オープン戦にも参加できなかった。また、連盟は10月13日に、聴取を尽くしたとして、今後追加で調査する考えがないことを明らかにした[11]



三浦側の反論


三浦はNHKの単独インタビューに応じ「絶対に不正をしていないし、携帯に(分析が可能な)将棋ソフトが入っていない。不正はしていないので処分を受けるいわれがない。将棋界最高峰の竜王戦だから竜王戦を辞退するわけない、離席が多かったのは体調が悪く、休んでいた時間が長かった。選んだ手が将棋ソフトと似ているという指摘については、(手が)似ているところだけ疑っているのかと思う。将棋連盟に対し所有するパソコン4台とスマートフォンにインストールしているアプリを撮影した画像を提出した。」と答えた[12]


また三浦は反論文を提出し、「全くの濡れ衣である将棋ソフト使用疑惑によるものであり、適正な手続きによる処分とは到底言い難いもの」とした。三浦自身は対局中の離席について「将棋会館内の休憩室である『桂の間』などで横になるなどして体を休めつつ次の指し手を考えていたり、会館内のトイレに赴いていただけです。対局中の食事についても、ほとんどが出前を注文しており、疑惑を持たれている対局では、対局中に会館の外に出ることはありませんでした。」[注 8]と説明してこの不正疑惑を否定しており、弁護士に相談するとしている[8]。また、代わって竜王戦に出場することになった丸山は連盟の決定に賛成出来ない旨のコメントをしている[10]



羽生三冠の発言


この処分については、「“黒”にしては軽すぎる、“白”にしては重すぎる」という意見もあった[13]。また、『週刊文春』は、羽生が島に「(三浦は)限りなく“黒に近い灰色”だと思います」とメールしたと報じた[14]が、羽生は妻である羽生理恵のTwitterを通し、「“灰色に近い”と発言をしたのは事実」だが、「疑わしきは罰せずが大原則と思っていますので誤解無きようにお願いを致します」と声明を出した[15][16][注 9]



第三者委員会による調査


日本将棋連盟は、10月27日には一転して、但木敬一を委員長とし、永井敏雄、奈良道博を委員とする第三者調査委員会の設置を決めた[17]。第三者委員会は、日本将棋連盟の委嘱を受け、出場停止処分の妥当性、三浦の対局中の行動を調査することになった。


2016年12月26日、第三者委員会は、疑惑について処分の根拠とされていた電子機器を使用した形跡はなく、またソフトとの一致率はその性質上根拠とはなり得ず、不正行為に及んでいた証拠はないと発表した。また、連盟の三浦に対する出場停止処分については、実際に三浦に対する疑惑が強く存在していたことや、竜王戦の開催が迫っており、三浦をそのまま出場させれば大きな混乱を招くことが予想されること、時間的に余裕もなかった点などを考慮して、やむを得なかったと結論を出した。きっかけとなった「久保戦の60手目に於ける30分以上の離席」は存在せず[注 10]、疑われた指し手のうち一つについても事前研究であった事が判明するとともに、複数の高段位棋士から三浦の指し手として自然だという証言が上がった[3][18]。これを受け、谷川浩司九段は連盟会長として、三浦九段への疑惑は「7月の関西の報告会での久保利明九段の発言」が発端だった事[19]を公表し、27日に記者会見で謝罪した[20]


出場停止処分は2016年末までのはずだったが、連盟の独断により2017年1月4日のヤマダ電機「第7回上州将棋祭り」に、出演予定だった三浦は出場しない旨が発表された[21][注 11]


三浦が在籍するA級順位戦においても、年明け以降の対局予定すべてが、対戦相手の不戦勝で、三浦は不戦の扱い[注 12]となっている[23]。三浦自身は1勝3敗5不戦の成績だが、出場停止前の三浦に直接対決で勝っており、すでに7勝以上が確定している棋士がいるため、5不戦の分すべてを勝ったとしても6勝3敗となり、もとより名人位の挑戦権は発生していない。


順位戦の救済措置として、次期(第76期順位戦)において三浦はB級1組に降級せずA級に留まるが、休場者がいた場合の張出と同じく11位とされ、A級は例年より1人多い11人の在籍者と3名の降級者[24][25][注 13]、またA級からの降級が確定していた森内俊之がフリークラス転出を宣言したこともあり、A級からの降級者がいないB級1組は11人の在籍者と1名の降級者で行われることとなった[25]。なお、はく奪された竜王戦の挑戦権に対する補償の内容は明らかにされていない。


第29期竜王戦で防衛を果たした渡辺明は、就位式で「メディアの取材に応じたことで三浦九段、読売新聞社様、将棋ファンの皆様方にご迷惑をおかけしました。申し訳なく思います。」と謝罪した[26]


その一方、渡辺とは反対に、挑戦者決定三番勝負での対戦相手になった丸山は、不正を疑われた4局の内2局が、第2戦および第3戦で[注 14]、当事者であり敗退したにも関わらず三浦に対して不正を疑っておらず[3]、疑惑否定派だった[27]。特に丸山は、騒動の発端から終息まで疑惑否定を貫いた一人である。また挑戦者決定戦第2局の観戦記執筆のため盤側で同席していた観戦記者の藤田麻衣子も、三浦の様子について「対局者が席を立つのもいつものことで、自分の手番でもよくあることです」として、特に不自然な点は見られなかったとしている[28]



谷川会長の辞任


2017年1月18日、日本将棋連盟会長の谷川浩司が、体調不良を最大の理由として辞任を表明。三浦を一時、出場停止処分にしたことなどについても、「対応に不備があったことは大きな責任を感じている」と語った[29][30]。そして三浦の復帰第一局は、2月13日の第30期竜王戦1組ランキング戦での羽生善治三冠との対局に決まったことが判明した[31]


2月6日に開催された連盟の臨時総会で、谷川・島の両名の辞任が承認され、後任の理事として佐藤康光・井上慶太の2人が選出された後、総会後の理事会での互選により佐藤が会長に就任した[32]。しかし棋士の一部には「本事件に関係した他の常勤理事も辞任すべき」とする意見があり、最終的に棋士28名の請求により2月27日に再度臨時総会を開催することになった[33]。同日、三浦は産経新聞のオピニオンサイト「iRONNA」の取材に、谷川への感謝を述べつつ、「一部のメディアと一部の棋士」と「観戦記者の小暮克洋氏だけは、許せないという気持ちはありますね」と述べたが[4]、これに対し小暮は「怒りを通り越して呆れています。名誉毀損だし、こんなバカな話はない。たしかに渡辺さんの相談には乗っていました。今はっきりしたことは明かせませんが、当時(三浦九段は)限りなく『クロ』だという認識でした。渡辺さんも相当悩んでいて、最終的には(連盟の)理事に相談した。本来、渡辺さんの役割はそれだけのはずでしたが、(三浦九段への聞き取り調査を行なった)常務会に、三浦さんの要望で渡辺さんが証人として呼ばれ、告発の責任者のように扱われてしまっている。(記事掲載以降は)仕事にも影響が出ている。法的手段? 私だけでなく渡辺さんの名誉が守れる方法を弁護士と相談しながら考えている。将棋連盟のためにもできるだけ丸く収めたいと思っているが、真実から目を背けることはできません。私なりに名誉を守ります。」と反論している[5][34]


またこれらの動きとは別に、谷川浩司の兄である谷川俊昭(元アマチュア王将)などが中心となり、本件の事実上の告発者である渡辺明に対して処分を求める署名活動が行われ[35]、2月17日に署名が連盟に手渡された[36]


2月7日、将棋会館にて連盟から三浦に対して謝罪がなされた[37]


2月13日、三浦の復帰戦となる竜王戦1組ランキング戦が行われたが、羽生に敗れ復帰戦を飾ることはできなかった[38]。続く先崎学戦、木村一基戦、豊島将之戦にも敗れたが、4月14日に収録された銀河戦の対局で戸辺誠を破り、復帰5戦目で初勝利を挙げた[39]



理事3名の解任


2月27日、前述の通り再度の臨時総会を開催。青野照市、中川大輔、片上大輔の解任が決まったが、佐藤秀司と東和男については否決され、続投することとなった[40][41][注 15]。佐藤康光新会長は会見で、「会員の不満が大きかったという気がする」と解任の理由を分析したが、具体的に何が否定されたかについては「正直わからない」と語った[42]



和解の成立


5月24日に連盟から和解が成立したことが公表され[2]、同日に連盟会長の佐藤、三浦、三浦サイドの弁護士が同席する形で記者会見が開かれた。和解内容としては「三浦九段が不正行為に及んでいたと認めるに足りる証拠はない」「日本将棋連盟による本件処分対応は許容される範囲内の措置であり、やむを得ないものと評価されるべきである」の2点を相互に受け入れること、また三浦が連盟に対し民事訴訟などを行わない点、連盟が三浦に補償金を支払うことが明らかにされている[2]。また、「三浦九段から『こういう状態では竜王戦は指せない。事態が収束してから集中して指したい』と申し出があった」のち三浦が竜王戦に出場しなかったことについて、「連盟側が三浦九段に対し休場を強要していなかったという事実」と、「連盟側が『竜王戦が開催されなくなった』と説明したという客観的な事実はなかった」ことが互いに確認された[43]


補償額については非公表だが、原資は告発した棋士ではなく連盟側であることを念頭に置いてこれから議論されること、および「高額」になることが、連盟会長の佐藤の口から明らかにされている[43]


将棋界に造詣のある元ジャーナリスト(現盤上ゲーム研究者)の古作登は、「タイトルを獲得する可能性もあった竜王戦の優勝賞金が4320万円ということから推定し、少なくとも5000万円は支払われている」と分析している[44]。また記者会見に先立ち、三浦に嫌疑をかけた当事者の一人である渡辺明が三浦に直接謝罪したことも明らかにされた[45]



再発防止策


本件のような不正を疑われる事態の再発を防ぐべく、連盟では既に2016年12月14日より、電子機器は対局前にロッカーに預ける、対局中は外出禁止等の措置を取っていたが[19]、2017年3月30日に連盟内に「対局規定委員会」を設け、対局規定を抜本的に見直す方針を明らかにした[46]。検討の結果、2017年10月1日から11月30日まで東京・大阪の将棋会館で行われる公式戦全対局において、金属探知機による身体検査及び目視による荷物検査を試験的に導入することになった[47]。ただ「違反時の罰則に関する明確な規定がない」ことから、実効性を疑問視する意見もある[47]


なお連盟で対局規定委員を務める大平武洋によれば、2018年4月現在は「電子機器を所持していたときの罰則ができた」ことを理由として全対局での検査は行っておらず、ランダムに抜き打ち検査を行う形式に移行しているという[48]



朝日と読売の盤外戦


この騒動の報道を巡って、名人戦主催者の朝日新聞は積極的に報道する一方で、竜王戦主催者の読売新聞がやや静観するという盤外戦が繰り広げられた[49][50]



第76期順位戦


三浦復帰後の第76期順位戦A級(2017年6月 - 2018年3月)では先述の通り、三浦は11位張出として11名の総当たり、降級者3名で争われることとなった。


当期は挑戦争い・残留争いともに混戦を極めた。残留争いは最終節直前時点で、渡辺(3位)・深浦(7位)・三浦(11位)が4勝5敗、行方(5位)が3勝6敗で、2つの残留枠を争う展開となった。その内、渡辺・三浦は直接対決を残しており、奇しくも本件の当事者がA級残留を賭け対戦することとなった。


結果は三浦が勝利し、久保に勝利した深浦とともに残留を決めた。渡辺は8期所属したA級から降級した。また久保は最終節直前時点で挑戦争いの首位であったが、この敗戦で6勝4敗で6名が並び、順位(9位)によりプレーオフ1番下からのエントリーとなった(1回戦で豊島に敗戦)。



将棋界以外の反応



囲碁


囲碁では、元々日本棋院が2013年に、対局中は携帯電話の電源を切ることを義務付ける規定(切り忘れで着信等があった場合、1回目で警告、2回目で失格)を導入していたが、2017年1月に対局管理規定を再度改正し、スマートフォン等の電子機器の対局場への持ち込み自体は禁止しないものの、対局中の使用を全面的に禁じることを明らかにした[51]。対局中の休憩時間に自らの棋譜中継を見るような行為も禁止となるが、囲碁界では将棋と異なり昼食・夕食休憩時の出前が認められていないこともあり[52]、対局中の外出禁止等を導入する考えは当面はないという[53]


囲碁名人4連覇などの実績のある依田紀基は、疑惑の発覚時から、自身のブログで積極的に意見を発信し「三浦九段の対応が僕にはどうも腑に落ちない。[中略] もし僕が棋聖戦[注 16]の挑戦者に決まって、身に覚えのないことで疑いを掛けられて、七番勝負の出場を停止させると言われたら、[中略] 徹底抗戦します。身に覚えがないなら、持っているスマホなどすべて警察に提出して解析させたらいいじゃないか? と思う。なんでこんなにあっさり引き下がれる?」と疑問を呈した[52][54]ただし、本事件のような場合には、一般的に警察は解析はしない。[要出典]


囲碁タイトル戦史上6人目の名人本因坊である高尾紳路も「仲間の棋士[注 17]が『黒』と言い切っている。それを信じる。」と三浦に懐疑的であったが[52]、一方で本因坊6期などの実績のある武宮正樹は「将棋連盟は冷たい対応だねえ」と三浦に同情した[52]



脚注


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注釈





  1. ^ 「マスコミの取材殺到などを避けるため」などの理由により当該ツイートは既に削除されている。


  2. ^ 後に第三者委員会の報告書によって、31分間の離席は久保の勘違いであったことが判明している[3]


  3. ^ 当時、離席は棋士それぞれの自由であり、頻繁な離席長時間の離席ともに特にルールは決められていなかった。


  4. ^ 報告書によると離席はそれぞれ26回、23回であった。


  5. ^ のちに、三浦は観戦記者の小暮克洋に対し「許せない」と名指しで非難した[4][5]


  6. ^ しかし、渡辺が疑った指し手のうちのひとつは後の調査により、三浦と若手棋士の事前研究であったと対局以前のキャリアメールから判明しており、その他の手についても後に複数の高段位棋士から三浦の手として自然だと証言されている。


  7. ^ 一方で三浦は島元理事から竜王戦は開催されないとの報告をうけて休場を受け入れたと主張しており、これについて佐藤会長は連盟としてどうすべきだったか検証する必要はあると発言した。


  8. ^ のちに第三者委員会の調査で、「休憩室へ行ったら先輩棋士が囲碁をやっており、横になれないので仕方なく、守衛室で休んだ」と詳細が公表された。また「連盟からの要望がなかったにもかかわらず、自ら保有するノートパソコン2台、デスクトップパソコン2台、スマートフォンの全アプリを撮影した画像を提出しています」と主張した。


  9. ^ その後、妻のTwitterでより詳しい説明がなされ、疑惑について当時「その経緯が本当に事実でもグレーと」「証拠もないのに処分は全く不当!」と島元理事に伝えたものの、「【グレー羽生善治】の所だけに焦点を当てたご都合切取り主義と、主人をあたかも三浦先生告発の一員と誤解を受ける様に名前を利用された」と当初の報道を強く否定している。


  10. ^ ただし、指摘されていた時間に3回の離席があったことは確認されている。


  11. ^ ただし、ヤマダ電機のはからいにより、三浦は前日3日の「第13回YAMADAこども将棋大会」の開会式にサプライズで登場し、来場のファンに挨拶を述べた[22]


  12. ^ 公式webの表記は「-」で負けが付いていない。


  13. ^ いずれの人数も第44期以来32期ぶりの人数となる[24]


  14. ^ 他の2局は、竜王戦本戦トーナメント準決勝の対・久保戦と、A級順位戦の対・渡辺戦である。


  15. ^ 臨時総会に出席した田丸昇九段によれば、5人の理事の解任は投票により賛成過半数を満たすことによって決議されるが、大半の理事について、投票数は2 - 8票の僅差であり、棋士の見方はほぼ二分されていたと言う。なおこの時期、女流・引退棋士を含む正会員数は234名、出席者は委任状64を含め216名、過半数ラインは109票であった[56]


  16. ^ 囲碁の棋聖戦は、将棋の竜王戦と同じく読売新聞社が主催し、囲碁の名人戦・本因坊戦を上回るタイトル序列1位の最高棋戦である。


  17. ^ 高尾紳路は、渡辺明と親交がある[55]




出典





  1. ^ “第29期竜王戦七番勝負挑戦者の変更について”. 日本将棋連盟 (2016年10月12日). 2017年3月2日閲覧。

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参考文献


  • 中村徹、本誌取材班「将棋「スマホ不正」全真相」、『週刊文春』第58巻第41号、文藝春秋、2016年10月27日


外部リンク


  • 日本将棋連盟




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